日本は将来的な見通しについて光明が見えない

しかし、将来的な見通しについて全く光明が見えない国が存在している。それはわれわれの国である日本だ。日本の直近の景気状況は2019年10~12月期GDP改定値は年率7.1%減となっている。政府はGDP減少の理由について様々な屁理屈を述べていたが、誰がどうみても10月1日から始まった消費増税が影響していることは明らかだろう。アベノミクスの第二の矢であった機動的な財政政策は逆方向に砕け散った上に、第三の矢である規制改革に至ってはまともに飛んだ形跡すら見当たらない。したがって、米国経済と違って日本経済はその足腰が弱った状態で新型コロナウイルスに伴う経済危機に直面していることになる。日本政府は自ら転んで骨折したところで、更に交通事故にあったくらい悲惨な状況だ。

後述する4月7日に示された危機意識の欠落した補正予算だけでなく、その陰で3月17日に政府から衆参議員運営委員会理事会で示された日本銀行政策委員会の審議委員人事案も注目すべきだ。退任する布野幸利氏に代わって消費税増税容認派と目される中村豊明氏が政府から人事案として示されたのだ。同氏は日立製作所取締役を務めた人物であり、産業枠として経済界の代表として送り込まれる人物である。日本銀行政策委員会の審議委員は金融政策決定会合の結果を左右し、一度任命された後は5年間の任期中にそのポストを追われることはない。当然ながら、日本経済に与える影響は極めて重要なポストだ。

当たり前の人事決定プロセスがない日本

米国ではFRB理事の承認プロセスでは連邦議会によって徹底的な振るいにかけられる。過去の金融政策に関する発言はもちろん、その素行についても細かく審査される。直近でもトランプ大統領が指名した人事案は人選の問題が指摘されて首尾良く運んでいない。現在の承認プロセスにある人物も過去の金融政策に関する発言と現在の金融政策に関する方針に関しての整合性について連邦議員から問題視されている。日本のように産業枠などの割り当てではなく、理事候補者の見識・人物が公開の場で問われるのだ。その影響力の大きさから行われるべき当たり前のプロセスが踏まれている。

中村豊明氏は12年社会保障と税の一体改革に関する特別委員会公聴会において、日本経済団体連合会税制委員会企画部会長として出席している。その際、消費税率の引き上げが伴う三党合意について、消費税増税派である経団連の税制改革の責任者として増税賛成の見解を述べた人物である。