そもそも「テレワーク」の正しい定義は何か
そもそもテレワークとは何か。日本テレワーク協会によると、「情報通信技術(ICT)を活用した時間や場所にとらわれない柔軟な働き方」を指す。ただ、この定義自体がすでに問題をはらんでいる。
いまや多くの業務がICTを利活用するものであり、逆にそうならないものが少ない。肉体労働や、ホスピタリティを生かした労働も、大方はICTを利活用している。例えば、宅配便のドライバー兼配達員は荷物の管理などのために端末を活用しており、肉体だけでなく、高度にICTを活用した労働者である。
オフィスからの離れ方に関しても種類がある。大きく分けると、在宅勤務、モバイルワーク、サテライトオフィス勤務だ。
在宅勤務は文字通り、自宅で仕事をすることを指す。モバイルワークは、直行直帰型の営業担当者などを想像するとわかりやすい。ノートPCやタブレット、スマートフォン、その他業務用端末などを持ち歩き、外で働くスタイルだ。サテライトオフィス勤務は、自宅でも勤務先でもない第3の場所を活用して働くスタイルである。企業が用意した出張所、契約したシェアオフィスなどで働くスタイルだ。官庁やテレワーク協会などの定義でも、この3つの類型が示されている。
やや余談だが、シェアオフィスと聞いて皆さんはどのような場所を想像するだろうか。例えば、昨年業績悪化で話題となったWe Workに代表されるような、都市部にあるおしゃれなオフィスを想像するかもしれない。あるいは、カフェ風のスペースだ。ただ、シェアオフィスはそれだけではない。最近は、カラオケボックスチェーンも参入している。今は新型コロナ感染を恐れて近寄らない人も多いだろうが、もしカラオケボックスに行く機会があったら、シェアオフィスサービスがないか、チェックしてみよう。対応しているお店なら、HDMIケーブル、ホワイトボードなどを借りることができる。
本来は頻度や距離を組み合わせた上で行われる
テレワークはその利用頻度によっても分類できる。完全にテレワークなのか、週に数回など定期的なものなのか、家族の育児や介護、自身の通院などさまざまな事情に合わせた突発的なものなのかによっても異なる。
どれくらい距離が離れているのかという問題もある。あくまで通勤が前提であって、何かあったときに駆けつけられるレベルなのか、日本国内ならどこでも良いのか、海外にいてもOKなのかなどの違いがある。
業種や職種によって、テレワークの中身も異なる。中には、根本的に自宅ではできない業務というものがある。特殊な機材を必要とするものなどだ。対面での販売の仕事などもできない。さらには顧客の都合にもよる。
言うまでもなく、これらは組み合わせた上で行われるのが現実だ。しかし、現在起こっていることは「強制自宅勤務」にすぎないのである。これを「テレワークだ」と呼ぶのはやや無理があるのだ。