「受け手が贈り手を育てる」という発想

【柳澤】影山さんは受け取ったぶんじをどうやって使っているんですか?

【影山】お客さんから受け取ったぶんじは、僕らが農家さんから野菜で仕入れるときに使ったり、スタッフのお給料の一部として使ったりしています。農家さんはそれをまたボランティアの方に渡したりして通貨が地域を循環します。

【柳澤】なるほど。そのたびに感謝の言葉が書き込まれていくという。

【影山】そう、僕はよく「受け手が贈り手を育てる」という言い方をするのですが、喜んでくれる人がいるともっといいものをつくろうとか、どうやったらもっと喜んでもられるだろうとか、そういう発想になっていく。今日がまさにそうなんですが、たとえばオンラインサロンのための収録って、そこに人がいるのにスタッフばかりでリアクションがないですよね。

【柳澤】そうですね。何か変な緊張感があるんですよ。

【影山】この状況はこの贈り手の気持ちをどんどん萎えさせていくんです。

【柳澤】リアクションがないから緊張するんだ(笑)

長く続いた秘訣は「街の仲間」とつくったこと

【影山】リアクションがあると、もっと送ろうという気になる。コーヒーおいしかった、ケーキおいしかった、いい時間を過ごせました、と言ってくださるいい受け手が街の中に増えていくと……。

【柳澤】全体的にサービスの質も上がるってことなんですね。

【影山】そうです。お店をやっていると、最初の頃はピュアな動機を持っていても、だんだんどこか惰性になってしまうことがあったり、いろんなステークホルダーも増えたりして、やっぱり売り上げを気にして毎月預金通帳ばかり見ている状況に陥ることもあるんですが、自分の目の前で喜んでくれる人がいると、たんに「売上を増やしたい」というだけでなく「もっとうまいラーメンをつくってやろう!」って気になると思うんです。

【柳澤】目指すものが売り上げという抽象的なものではなくて、より本質的になっていきますよね。この地域通貨はカフェをオープンしてからどれぐらいしてからつくったものなんですか。

【影山】お店ができて4年たった頃に街の仲間とつくりました。ある地域のお祭りをやるときに、何か面白いことを考えてみようと声をかけたら10人ぐらい企画メンバーが集まったんです。特定の誰かがすべて背負って始めたものではなかったのがここまで長く続いてきた秘訣の1つでしょうね。