喪失に対峙し、乗り越えていく能力を高めた先にある世界

大きな喪失を悲しむには時間がかかる。一回の対話だけで悲しみのプロセスが最後まで進むことはないだろう。話しやすく、連絡がつきやすい状態でいよう。また、あなたが熟達したカウンセラーであることを、誰も求めていない。あなたが提供できる以上のサポートが必要だと感じたら、適切なプロのコーチやカウンセラーを見つける手助けをしよう。

(『セキュアベース・リーダーシップ』P143)

喪失に対峙し、乗り越えていく能力を高めた先には、きっと、もっと強くて、優しくて、しなやかな社会があるのだろう。日本にとっても、世界にとっても。どちらかといえば悲観的にものごとを捉えがちな私にとっては、それは一筋の光である。

ただ、そこにたどり着くプロセスにおいては、私たちはそのプロセスを歩むために必要な考え方、ツール、対話や行動の仕方を学んだ上で、それを実践し、お互いを支え合っていく必要があるのだと思う。

私も人の力になれればと思うし、人の力になれていると思うことが自分の支えになる。私にとっても人の力が必要だ。実践を通じて、支え合っていく力を育む時間にできたら、と思う。

何と絆を結んでいるかを理解する

悲しみを理解せずに、絆を理解することはできない。別離を理解せずに、愛着を理解することはできない。そして、人間関係の複雑さを理解するには、一人ひとりが、人や目標、目的、価値、ペット、理想など、様々なものと絆を結んでいることを理解する必要がある。

(『セキュアベース・リーダーシップ』P101)

マクロン大統領の言う「本当に大切なものを再確認する」とは、「何と絆を結んでいるかを理解する」ということかもしれない。私は、あなたは、何と絆を結んでいるのか。私の、そしてあなたの大切な人は、何と絆を結んでいるのか。その絆はいま、傷ついていないか、失われてはいないか。だとしたら何ができるか。「喪失」とどう対峙し、乗り越えていくか、その能力を高めるにはどうしたらいいか。本稿が、その議論と実践のささやかなきっかけになるなら、うれしい。

※本稿で紹介している『セキュアベース・リーダーシップ』の第4章を現在無料で公開しています。

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