中国人の買い物様式が大きく変わりつつある。ノンフィクションライターの西谷格氏は「ネット融合型スーパー『盒馬鮮生』は一見すると日本のスーパーと変わらない。しかし、最新ITがフル活用されており中身は全く異なっている」という――。

※本稿は、西谷格『ルポ デジタルチャイナ体験記』(PHPビジネス新書)の一部を再編集したものです。

専用アプリで注文後30分で到着、中国の最先端ネット型スーパー

猛烈な勢いでデジタル化が進む中国社会で、とくに未来を感じさせたのが、ネット融合型スーパー「盒馬鮮生」だ。中国を代表する巨大IT企業アリババが2016年1月から運営を開始し、現在は中国全土に170店舗を構える。

店名の「盒馬」は「河馬(=カバ)」、「鮮生」は「先生(=~さん)」と同音で新鮮さを表している。日本語にするなら“カバさんスーパー”といったところ。イメージキャラクターとして水色のカバを使っており、最先端技術とは裏腹に親しみやすい雰囲気だ。

専用のアプリから注文すると、店舗から3キロ以内であれば最短30分で配達が可能、というのが最大の売り。当初は完全に配送無料だったが、2019年夏からは、同日に2回以上注文した場合のみ5元(80円)の配送料をとるようになった。

日本でもアマゾンやイトーヨーカドーなどがネットスーパーを運営しているが、まだまだ浸透率が低い。ページを開いたが、結局買わなかったという人も多いのではないだろうか。

では、中国最先端のネットスーパーはどうなっているのか。

アリババが提唱する“ニューリテール”の典型事例としても知られており、次世代の流通システムを考えるヒントにもなりそうだ。さっそく乗り込んでみることにした。