企業は社会の公器である

企業は社会の公器だ。企業は商品やサービスの提供をとおして消費者とより良い関係を築く。顧客層が拡大するにつれ、社会全体に対する企業の影響力は増す。それが、企業が社会的責任を持つということだ。つまり、事業をはじめたその時点から、企業は社会全体からの信頼感を獲得し、強化しなければならない。特定の(一部の)利害関係者の欲求を満たすことによって、企業の長期存続が支えられるわけではない。

新型肺炎の感染が広まる中、多くの人がマスクを必要としている。フリーマーケットなどのITプラットフォームが、社会全体が必要とするモノの高額転売に利用されているのは、社会の公器としての本来の在り方にそぐわない。

経営学の専門家の中には、マスクの高額での転売は納得できないという考えを持つ人が多い。それは一部のITプラットフォーマーが企業は社会の公器であるという最も重要、かつ根本的なポイントを十分に認識できていなかったからだろうと指摘する者がいる。ITプラットフォーマーは、自社のサイト上で自由に価格が形成され取引が行えるというメリットと、社会全体の厚生のバランス感覚を磨かなければならないとの指摘もある。

ITプラットフォーマーの社会的な役割とは

この問題を考えるには、フリーマーケットなどの基本的な意義を確認する必要がある。それは、個人と個人(C2C)が直接にモノの取引を行うことで、より良い消費の選択肢を手に入れることにある。C2Cなどの取引を仲介することで、より良い需要と供給のマッチングを実現することが、ITプラットフォーマーの社会的な役割のひとつといえる。

ある人が洋服を買ったとしよう。着るタイミングを逃してしまい、シーズンも変わってしまった。捨てるのはもったいない。それを日曜日に近所の公園で開催されるフリーマーケットに出品したところ、他の人の関心をひきつけ、買ってもらえた。それによって、出品者と購入者はウィンウィン(両者にとってメリットがある)の取引ができる。これが本来のフリーマーケットの意義だろう。

社会の公器としての役割に加え、ITプラットフォーマーは常識と良識にもとづいてサイトやアプリの管理・運営を行わなければならない。新型肺炎への不安が高まる中で一部の人が他人の足元を見て利得を手に入れる状況は容認できない。それは、多くの人が抱く常識的な見方だろう。多くの人が常識で考えて納得できることが重要だ。