昔は子どものおやつだったが、大人が楽しむようになり若い女性も支持する。カンロの「ピュレグミ」は果肉食感も打ち出し、食事の後にデザート感覚で楽しめるという声も聞く。

残された市場は中高年世代と男性だが、若い女性に人気→中高年や男性が関心を持つ、という商品の鉄則も多く、徐々に浸透していきそうだ。

なお、東京五輪もあり、日本のグミは「訪日外国人客への訴求」も注目されていたが、こちらは新型コロナウイルスの影響で、先行きが不透明となった。

「糖質」に厳しい目が向けられる時代

気分転換や小腹満たしのお菓子として、グミには次の優位性がある。

(1)健康イメージがよい
(2)一定の腹持ちで、後ろめたさが少ない
(3)手が汚れにくい
(4)パパッと簡単
(5)1回当たりのコスパがいい

例えば(1)は、果肉や果汁由来の品が多く、メーカーも訴求に力を入れる。「ピュレグミ」のパッケージにも「ちゃんと果実な、甘酸っぱさ。」「コラーゲン&ビタミンC入り」といったコピーが踊る。特に女性の場合、小腹満たしに「健康」や「美容」がつくと、内なるエネルギーになる――という人が多い。

一方、アメも(2)から(4)はすぐれているが、(1)はどうだろう。

現在の消費者が糖質やカロリーに注ぐ目は厳しい。例えば清涼飲料水でも無糖の「炭酸水」が市場を拡大し、最近の調査では国内飲料市場の「無糖飲料製品」構成比は、平成の30年間で8%から49%(全国清涼飲料連合会調べ)と伸びている。

また、筆者が女性に大人おやつの愛用品を聞いた際に出てきた「やわらか黒おしゃぶり昆布」(ローソン)は1袋で26キロカロリー。これはカンロ飴1粒と、ほぼ同じだ。

カンロもそこは認知しつつ、糖は人間にとって大切な栄養源という姿勢だ。今回は紙幅の関係で詳述しないが、コーポレートスローガンに「糖から未来をつくる。」も掲げる。

パリパリという咀嚼音のASMRで一躍人気に

こうして考えると、同社の取り組みには「今日のメシ」と「明日のメシ」という言葉が当てはまる。大黒柱の飴が健在なうちに、グミを拡大させようという取り組みだ。2019年2月には松本工場(長野県松本市)に「新グミライン」も稼働し、生産体制も強化した。

「グミッツェル」に象徴されるように、「グミには形状や味わいなど、さまざまな可能性があります」と内山氏は話す。パリパリという五感での訴求も興味深く、新宿ミロード店では、グミッツェルを噛む自分の咀嚼音そしゃくおん「ASMR」(聞いて心地よいと感じる音)も体験できる(※)。

※コロナウイルス感染対策のため、3月2日より一時中止している。

「新宿ミロード店」は、住宅に例えれば、新たなモデルハウスだ。ここでさまざまな取り組みを行い、成功事例は、社内の次なる活動に組み込む。老舗の母屋がやっていることは店名(カンロ)にチラリと示すだけ。感性を集める場所でもあるのだろう。

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