外食チェーン店の感染リスク

まず大手外食チェーンの店舗での従業員経由での感染リスクは、通勤電車や大企業のオフィスと比べて低いはずです。その理由は、仕入れから工場での加工、店舗での調理提供にいたるまでのプロセスが、「食中毒を起こさない」という観点から設計されているからです。

これは外食チェーンの欠点でもあり利点でもあるのですが、店舗運営においてはおいしさや栄養よりも安全を重視する傾向があります。たとえばサラダの部材など、調理法としては殺菌しないほうが栄養は残るしおいしいことがわかっているのですが、それでも食材を徹底的に殺菌します。

従業員も手洗いなどの教育を徹底していますし、発熱したり風邪気味だったりしたら職場に入れることはない。その意味で不特定多数が触る可能性がある小売店の棚に置かれている食材のほうがウイルスの感染リスクが消せず、相対的には感染リスクが高いといえます。

言い換えれば、食材を小売店で買って自宅で調理するよりも、外食チェーンで提供される食事をとるほうがウイルスの感染リスクは低い。これは私の外食産業に関する知識からの判断です。もし、外食チェーンの店舗で新型コロナウイルスに感染するとしたら、それはほかの顧客経由になる場合が多いでしょう。

鍋をつついてはいけない

消費者側が外食を考えるなら、厚労省の文書にあるように、ビュッフェのような不特定多数の顧客が手にとる飲食形式は避けるべきです。ドリンクバーもおなじです。金属やプラスチックのボタンにはウイルスが付着している恐れがあります。

香港では、火鍋を囲んだ親族のうち10人が感染した例があります。ですから鍋をつつく、ないしは焼き肉を直箸でというのはやるべきではない。しゃぶしゃぶに行くのであれば鍋奉行に菜箸で分けてもらうべきだということです。そもそも4人が笑顔で会食しながら、その中のひとりが発熱して空咳をしているようであれば飛沫感染のリスクがあります。どこで何を食べるかの前に、一緒に食べる友人のために自分の健康状態を管理しておくことは絶対条件ですね。

とはいえ家族や仲のいい知り合いや友人と一緒に食事をするのは、このような時期の精神衛生上は必要なことです。なんでもかんでも自粛ではなく、メンバーが健康であるという前提でテーブルを囲むことは、リスクを回避しながら両立できることだと思います。