感染者ゼロでも「非常対策本部」を立ち上げる

タイ、日本、韓国などで新型コロナウイルスに感染した患者が発生したことを受け、台湾政府は1月20日、「厳重特殊伝染性肺炎 中央伝染病指揮センター」を正式に立ち上げた。日本でいう「非常災害対策本部」のような存在だ。全省庁と地方政府の横断的な連携で伝染病対策に取り組む体制が、これで整った。このニュースはすぐに国民に伝えられ、政府は積極的対応に乗り出しているから安心してほしい、というメッセージにもなった(ちなみに、日本で新型コロナウイルス感染症対策本部が設置されたのは1月30日になってからである)。

翌21日、武漢からの飛行機で帰台した50代女性が、空港での検疫で「症状あり」と認定され、搬送先の病院で陽性と判定された。残念ながら台湾で最初の感染者が確認されたことになるが、体制が整っていたために水際でスクリーニングができたと評価できる。機内で当該の女性と接触があったと見られる46名についても追跡調査が行われ、幸い全員が陰性と確認された。

この時点で、WHOもようやく「ヒトからヒトへの感染」の可能性を認め、同時に台湾は武漢地区の危険レベルをレベル3「警告/Warning」に引き上げた。日本が、武漢の危険レベルをレベル2まで上げる2日前だ。そのころ日本の厚労省はHPで、武漢市からの帰国者および入国者の「自己申告」を、空港等でのポスターや機内アナウンスで促す措置を取ったと報告していた。

マスクが不足すると、素早く輸出制限

1月22日には総統府で、蔡英文総統が「国家安全ハイレベル会議」を招集、1月23日に武漢市が封鎖されると、台湾政府も伝染病発生レベルを上げ、警戒態勢を強化。「中央伝染病指揮センター」を陳時中・衛生福利部長が直接指揮することになる。台湾行政院(内閣)の蘇貞昌(Su Tseng-chang)行政院長(首相)や各閣僚も集まり、政策を協議した。

1月24日には中央伝染病指揮センターが、行政院および経済部と協力して大きな政策を打ち出すことになる。それが「マスクの輸出禁止」だ。中国の動向に敏感な台湾ではデマ情報も流れ、台湾国内でもマスク不足が深刻になり始めた直後の素早い決定だった。