フェイク情報には即座に対処、罰則も

1月8日には、すべての国際線と中国・厦門アモイ、泉州、福州などの船舶の往来についても警戒レベルを上げる決定を行った。また、2019年12月31日から1月8日までの武漢地区からの帰国便数(13便)、帰国者についての検査人数(1193人)、疑義のある案件数やその症状(8日時点で感染者なし)も明確に国民に報告し、管理体制が整っていることを積極的に国民に開示。その後も、台湾での検査状況と武漢・中国での伝染病情報は、毎日アップデートされている。

1月11日、会員制交流サイト(SNS)で「台湾ですでに武漢コロナウイルスに感染した症例が見つかった」というデマ情報が流れたが、台湾政府はすぐに当該情報が虚偽であると発表。ウソ情報、虚偽報告などのデマを流した者は「社会秩序維持保護法」あるいは「伝染病予防治療法」で罰せられると警告し、国民の不安を取り除く努力をしている。

1月14日には、タイで武漢から来た中国女性が陽性反応で隔離されたことを衛生福利部が確認。タイからの入国者や帰国者への特別検疫体制を検討したが、14日時点では見送ったとも発表された。このように、台湾当局は細心の注意を払いながら、情報を独自に収集し判断を下していることがわかる。

証拠がないから対応しない日本、危険性があるから対応する台湾

1月16日には、武漢から1月6日に帰国した神奈川県在住の中国人男性が10日に発病、16日に陽性と確定されたことが日本でも報道され、衛生福利部でも検討の対象とされた。

しかし日本では、この時点でも厚労省のコメントとして「ヒトからヒトへの感染リスクは比較的低い」とテレビなどで報道され、厚労省のホームページ(HP)でも「WHOなどのリスク評価では、持続的なヒトからヒトへの感染の明らかな証拠はない」と表記。一方の衛生福利部は、タイと日本の例を分析し、ヒトからヒトへの感染は排除できないとして、さらに武漢地区への危険レベルをレベル2の「警示/Alert」(防護措置の強化)まで上げた。

証拠がないから警戒しない日本と、可能性がゼロではないから警戒を強めた台湾。両者の危機管理に対する姿勢の違いが、はっきり表れた事象だ。