施設職員が感染すると慌てて対処「何か起こらないとやらないのかよ」

厚労省の姿勢が変化したのは2月22日。東京都の老人保健施設(老健)の職員の感染が判明したことがきっかけだったようです。2日後の24日にはこれまでとは明らかにトーンの異なる「通知」が来ました。

そこには「家族が入所者の面会に来ても発熱の症状がある場合は断る」、「職員は出勤前に体温を測り風邪のような症状があれば休む」、「デイサービスの利用者も発熱があれば利用を断る」などと書かれていました。介護施設ではすでに実施済みのことばかりでしたが、厚労省から具体的な対応策が示されたことに安心したといいます。

「22日の一件があって慌ててつくって出した、という印象も受けました。何か起こらないとやらないのかよ、と」(Tさん)

厚労省職員と現場、危機感の持ち方で大きな隔たり

普段は安全地帯からゆるい指示を出すだけ。危機的状況になって、はじめて対処する。今回、政府の対応の遅れが大きな問題となっていますが、最優先事項のひとつであるはずの介護現場に対しても、「後手後手」だったそうなのです。

新型コロナウイルス対策で連日、会見をする加藤勝信厚労大臣だが、後手後手の対応が問題となっている。
同省の2月25日の会見動画から
新型コロナウイルス対策で連日、会見をする加藤勝信厚労大臣だが、後手後手の対応が問題となっている。

Tさんが憤りを隠さないのは、常に高齢者と間近で接しているからでしょう。厚労省の職員とは危機感の持ち方で大きな隔たりがあるのです。

「介護職の人間はふだんから感染症予防には細心の注意を払うことが身についています。研修も数多く受けていますし、感染症の知識はもとより予防のスキルもあります。また、特別養護老人ホーム(特養)や老健といった介護施設には感染症対策委員会の設置が義務づけられており、毎月スタッフが集まり、対応策を話し合っています」

Tさんが勤める施設では、居室は定期的に消毒し、トイレも入所者用と職員用とに分けています。手指のアルコール消毒はルーティンで、マスクは常時つけています。相当の備蓄があるので、「当分はマスク不足で困ることはないと思います」とのことです。