オーズィーとキュブリンの分析対象には、社会学系の論文が多く見られる。社会学では、地域に住む移民が増えると犯罪率が増えるかもしれない理由として、次のような理屈を挙げている。

①10代などの若者は犯罪を起こしやすいが、移民により10代や若者の割合が増えること。
②移民によって、地域が多様になるだけでなく、人の出入りが激しくなる。このため、社会的な結束が揺らぎ、共通の価値観が持ちづらくなること(「社会解体説」と呼ばれる)。
③移民が来ることで、地域における職探しの競争が激しくなり、民族間のいざこざが増えること、である。

一方、移民が犯罪率を減らすという考え方もあり、その理由として、地域コミュニティーを活性化することが指摘されている。新たなビジネスを展開して仕事を生むだけでなく、地域に住む人が増えて空き家率が下がるからだ。

彼らの分析では、若干ではあるが、後者の考え方に軍配が上がりそうだ。いずれにしても、これまでの研究では、移民が増えると犯罪が増えるという確固たる証拠は示されていないのだ。

外国人が増えると日本の犯罪は増加するのか

では、外国人が増加すると、日本における犯罪は増えるのだろうか。実は、外国人の凶悪犯罪率は、日本人よりも高くなっている。2018年の統計を使って計算すると、日本人による人口当たりの犯罪率が、0.009%であるのに対し、外国人のそれは0.026%だ。日本人10万人のうち、9人が罪を犯すのに対し、日本にいる外国人10万人のうち、26人が罪を犯す計算になる。

これらの数値は、前述の研究と同じような犯罪である重要犯罪(殺人、強盗、放火、強制性交など)数(警察庁の「犯罪統計」より入手)を、15歳以上の人口(総務省統計局の「人口推計」より入手)で割り算した結果だ。総人口から日本人人口をひいた数を外国人人口とする。

一方、重要窃盗犯(侵入盗、自動車盗、ひったくりやすり)では、違う結果となる。日本人による人口当たりの犯罪率が0.07%であるのに対し、外国人のそれは0.01%だ。外国人の犯罪率の方が低いのだ(15歳以上の人口ではなく、総人口で計算しても、重要犯罪・重要窃盗犯の両方で、この傾向は変わらない)。

しかし、こうした数値から、外国人は罪を犯しやすいと結論するのは早計だ。日本人と外国人では、環境が違うからだ。年齢や性別だけでなく、学歴や年収が同じような日本人と外国人を比べたら、犯罪率に差がないということも十分にありえる。