ドイツ発の児童小説『動物と話せる少女リリアーネ』(学研プラス)がシリーズ累計200万部を突破した。ライターの飯田一史氏は「装丁のイラストはかわいらしいが、小説のテーマは環境問題や人種差別、LGBTなど社会派だ。大人でも関心を持ちづらいテーマに、子どもたちが熱中している」という――。
イマドキの子どもたちに愛される“意識の高い”ヒット作
2019年、気候変動に警鐘を鳴らしたスウェーデンの環境活動家グレタ・トゥンベリさんに注目が集まった。同年代のミレニアム世代を中心に共感を呼び、彼女の呼びかけたデモには世界各地で行われた。
環境問題を“意識の高い”話題だと揶揄する大人もいる。しかし筆者自身、幼少期を振り返ると、オゾン層破壊のニュースを見聞きして深刻に気に病んでいた。子どものほうが環境問題に敏感なのかもしれない。
その象徴ともいうべき“意識の高い”ヒット作がある。特に世界中の女子小学生から熱烈な支持を受けているドイツ発の児童小説『動物と話せる少女リリアーネ』である。
ドイツでの刊行開始はは2007年から。日本では2010年から刊行が始まり、シリーズ累計200万部を突破。欧米圏や東南アジア圏を中心に各国に翻訳されたほか、ドイツでは実写映画化もされている(日本では未公開、DVD発売のみ)。
主人公は、どんな動物とも話せる少女リリアーネ。さらに彼女が笑うと花がさいたり、植物が元気になったりもする。しかしその秘密が周囲に知られるとこれまではひどく気味悪がられ、一家は3回も引っ越し、リリアーネは転校をくりかえしている。
新しい家のとなりに住む少年イザヤも、ある秘密を抱えていた。イザヤはいわゆるサヴァン症候群と呼ばれる天才少年。人並み外れた知能を持ち、様々な分野の知識をへたな大人よりも持っている。けれどイザヤも、勉強ができすぎることで同年代の人間たちからガリ勉扱いされ、敬遠された経験があり、ふだんはその能力を隠している。
そんなリリアーネとイザヤがある日出会い、動物園などで起こる事件に巻き込まれながらも持ち前の行動力によって解決していく、という物語だ。