手軽な児童小説が、国際的なニュースの話題と接続する
小学3~4年の子どもたちからは「初めて長い物語を全部読めた!」「リリ楽しい!」という感想が多い。それが高学年になると物語と国際的なニュースとがリンクしていることに気づき始め、「将来は環境を守る仕事に就きたい」といった感想が来るようになるという。
「色々な要素が詰まっていますが、やはり『リリアーネ』は『子どもたちの冒険』であることを大切にした作品なんです。大人目線で読むと時折『おいおい、イザヤとふたりで夜中に抜け出しちゃうの?』『え、猛獣のいる檻のカギを開けちゃうの?』と思うこともあるでしょう。けれど、子どもが主役の冒険物語だからこそ、読者が自らを重ね合わせて『ここに書いてあることは自分たちの問題だ』と思って読むことができるんです」(岡澤氏)
この記事では『リリアーネ』が「一見かわいいが実は社会派」であることを強調してきた。ただもちろん、子どもたちは何より「おもしろいから読む」。これは大前提だ。
キャラクターが魅力的でストーリーテリングが優れているからこそ、説教くささを感じずに読者は作品から問いかけを受け取る。そしてそれが子どもの心に響く問いだからこそ、彼女たちは考える。
グレタさんを「変わった考えの珍しい子ども」と思うのは間違いだ。たとえ声高には叫ばなくても、今の世界に対する問題意識を抱えた少女たちが世界中にいる。動物たちを通して気候変動から児童虐待が子どもの発育に与える影響といった社会問題にまで踏み込んだ『リリアーネ』の世界的なヒットが、その証拠である。