主婦層をターゲットに、ネットショップを始めた

——具体的にどうやって仕事に?

ターゲットとして注目したのは、カレーマニアではなく、30〜40代の主婦層。忙しい毎日で献立を考えている子育て世代の方にこそ、“簡単、おいしい、アレンジ自在”なスパイスカレーが必要だと思ったんです。そこで、SNSをやり始め、主婦の方々とつながって交流を持つように意識しました。

大学3年生の春、オリジナルスパイスセット3種類を各100セットずつ作りました。小さい頃からお年玉を貯金するのが趣味だったので(笑)、その中から10万円を資本金に。自宅に在庫がドーンと大量に届いたときは、「こんなに売れるのかな」と不安に陥りましたが、結果的には、ネットショップで販売したところ、初日に10セット売れ、1カ月で完売。その後もSNSで拡散され、問い合わせが殺到しました。

ポイントは、質のいいものならなんでも売れるわけではなく、「主婦層」をターゲットに、親しみやすいパッケージや価格設定にしたこと。本気でビジネスにするには、「誰に届けたいか、誰の役に立つのか」まで考えること、つまりマーケティングが大切です。

画像=『これが私の生きる道!』
本格派インドカレーが3ステップでできあがるセットなど、「簡単に作れる」商品を展開している

激アツメールで「競合」を説得

——苦労したことは?

スパイスを製品化してくれる工場を探すのに苦労しました。大学2年生のときです。ネット検索した業者に直接交渉するも、学生という肩書で信用されず、香りの強いスパイスを扱うこと自体に難色を示され、相手にしてもらえない日々。諦めかけました。

そんなとき、たまたま大学の講義で隣に座った先輩からの助言があって、類似のスパイス販売をしている方に問い合わせてみたんです。言ってみれば競合なのですが、「こんなスパイスミックスを作りたい!」と思いの丈をつづった、激アツのメールを送って。

幸運にも、私の熱意を受け入れてくれる方で、スパイスを商品化してくれる製造元を紹介してくれたんです。それが、社会福祉法人「はらから福祉会」。私の地元・宮城県にある障がい者の自立支援施設でした。今までの苦労も、「はらから」と出会うためと思えたほど、縁を感じました。

——地元への貢献にもなっていることで思うことは?

食品加工作業をしている「はらから」を訪問し、丁寧に手作業をしているところを見て、大きな価値があるように感じました。スパイスを通じて、“障がいを持っていても同じように働いて、生きがいを持って生きる”という「はらから」の活動についても知ってもらえたら幸せです。

そして、2019年の秋、宮城のふるさと納税の返礼品として商品開発に携わったのを機に、株式会社「香林館」として法人化。大学院卒業までは個人営業主で、と考えていたので時期は早まったのですが、いろんなタイミングが重なったのだと思います。