ずば抜けて多い「中国人旅行者の買い物代」
世界から日本にやってきた訪日旅行客は、日本政府観光局(JNTO)の推計によると、2019年に3188万人と過去最多を記録した。政府はオリンピックがある2020年に4000万人の目標を掲げてきたが、その達成に黄色信号が灯っている。2018年に初めて3000万人を超えた時には、2020年の4000万人到達は十分にあり得る数字だったが、日韓関係の冷え込みで韓国からの訪日客が激減、2019年は前年比2.2%増というわずかな伸びにとどまった。
そんな中で、大きく伸びたのが、中国からの訪日客。前の年よりも14.5%多い959万人に達した。何と全体の30%が中国からの観光客・ビジネス客だったのだ。
彼らが日本国内で落としたお金も大きい。
観光庁の「訪日外国人消費動向調査(速報)」によると、2019年に訪日外国人客が日本国内で消費した金額は、4兆8113億円。前の年に比べて6.5%増えた。それを支えたのが中国からの旅行客の増加だった。推計によると、前の年より14.7%多い1兆7718億円にのぼったとみられている。外国人の消費額全体の37%に達する。
「爆買い」に象徴されるように、中国からの旅行者が「買い物」に使う金額は他の国々からの旅行者に比べてひときわ多い。ひとり当たりの消費額は21万2981円と、全体の平均15万8458円を大きく上回る。消費額が最も多いのはオーストラリアからの旅行客の24万9128円だが、彼らが使った「買い物代」は3万1714円にすぎない。モノの消費を担っているのは中国人旅行者だということが分かる。
「世界一コンパクトな大会」のはずが巨額の支出に…
そんな最中に起きた新型ウイルスの蔓延である。中国からの来日客が減少し、日本の百貨店での春節期間(1月24日から30日)の免税売上高は前年比2ケタのマイナスになったと発表されている。
当然、中国以外の地域、特に欧米からの観光客が中国や日本などアジアへの旅行を忌避する可能性は高まっており、今後も日本経済への打撃は深刻だ。特にオリンピックへの来場者が減れば、大会前後の関連消費が期待外れに終わる可能性が出てくる。
オリンピックが期待通りの経済効果をもたらさなかった場合、日本経済は大会後にそのツケを払うことになる。
誘致した際には「世界一コンパクトな大会」にするとしていたが、関連予算は大幅に膨らんでいる。会計検査院が昨年12月4日に公表した集計によると、オリンピック・パラリンピックの関連事業に対する国の支出は、すでに約1兆600億円に達している。政府と大会組織委員会が「国の負担分」や「関係予算」として公表してきた額は2880億円だが、すでにそれ以外に7720億円が使われたとしているのだ。
国の支出以外にも、東京都が道路整備なども含め約1兆4100億円、組織委員会が約6000億円を支出することになっており、検査院の検査結果を加えるとオリンピックの関連支出は3兆円を超す巨額にのぼることが明らかになった。