特に議院内閣制の下では、政府与党は国会で過半数議席を持っているので、政府が作った法律案はほぼ自動的に可決となる。ゆえに、野党は、政府に対していかに文句を言ったか、可決の日程を遅らせることができたかというしょうもない仕事がメインとなってしまう。それで、政府の追及に力を入れることになる。

どのみち政府の法律案は可決になるのだからということで、与野党含めて国会は、世間の常識からかけ離れた、国会独自の「段取り」「手続き」「メンツ」を重んじる場になっている。まあ、それしかやることがないのだから、ある意味仕方がない。だから、くだらない国会独自のルールにがんじがらめに縛られて、それを尊重することで仕事をやった気になってしまう。

ついでに、意味のない「国会ルール」の見直しも進む

橋下 徹『トランプに学ぶ 現状打破の鉄則』(プレジデント社)

本来、国会は法律を作る場だ。野党から法律案を出そうと思えば、適当な「要望」「提案」のレベルではダメだ。責任をもってしっかりと法律案を作らなければならない。

そして野党が法律案を出してくれば、今度は与党がその問題点を指摘していく。お互いに法律の根底を流れる思想や国家戦略などを議論し合って、法律を創造していく。

この「創造する過程」というものは前向きで、クリエイティブなものだ。国会議員は、憲法解釈を行わなければならないし、衆議院や参議院の法制局もフルに動かなければならない。

そして「良いものを」創造するには、あらゆる作業が生産性の高い効率的なものでなければならない。当然ICTはフル活用しなければならないだろうし、意味のない国会独自ルールの見直しもどんどんやっていくことになるだろう。

このように常に前向きで効率的な国会を目指すことになるし、そうならないと創造的な仕事などできない。

ところが今は、国会において「創造」の作業がほとんどないので、政府や与党議員のスキャンダルの追及という後ろ向きな話ばかりになってしまう。国会という職場は超非効率な生産性の低い場となり、法律の制定を全て政府に委ねるので、内閣法制局が絶対的な存在になってしまっている。

そこで内閣の一員に過ぎない内閣法制局が憲法の番人扱いされている。本来は衆議院、参議院の法制局こそが憲法の番人にならなければならないのに。

これまでは、議員は政府を追及する立場。政府に「要望」「提案」するだけの立場だった。

しかし、このような議員像はもう時代遅れだ。

議員対政府という形で議論する関係から、与党議員対野党議員という形、さらには野党議員対野党議員という形で議論する関係へ。このように国会の構造を抜本的に変えていかなければならない。

(略)

(ここまでリード文を除き約2600字、メールマガジン全文は約1万800字です)

※本稿は、公式メールマガジン《橋下徹の「問題解決の授業」》vol.187(2月11日配信)の本論を一部抜粋し、加筆修正したものです。もっと読みたい方はメールマガジンで! 今号は《【フェアの思考(5)】新型肺炎・今後の課題はあいまいだった法的根拠の整備。国会議員よ、法案づくりに知恵を絞れ!》特集です。

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