「親父はけっしておれを見放さなかった」

おれは7人兄弟のひとりで、覚えている限り、いつでも親父にくっついていた。

親父が畑でトラクターを運転するときも、造園の仕事をするときも、種苗場で働くときも、親父のそばにいた。親父はおれを可愛がってくれ、おれはいつも親父べったりだった。

大きくなってからだが、トラブルに巻き込まれたとき、親父がやってきて、助け出してくれた。文字通り、ずかずかとやってきて、おれを引っ張り出してくれた。さんざん言われた。「お前はよい子なのに、どうしてこんな馬鹿なことをするんだ。目を覚ませ。酒やドラッグに溺れていないで、ちゃんと仕事しろ。まともな人間はごろごろ寝ていたり、酒やドラッグに浸っていたりしないで、まじめに仕事をするもんだ」。

親父は毎朝6時におれの家にやってきて、おれを叩き起こし、言った。

「さあ、仕事に行くぞ。家族を養わなくちゃ」。

親父はけっしておれを見放さなかった。

「おまえは役立たずだ」とか「どうせろくなもんにはならない」とは、いっさい言わなかった。

親父が励ましてくれなかったら、おれはとっくに死んでいただろうよ。

親父はおれの救い主だ。いつも口調は厳しかったが、そこには愛情がこもっていた。

厳しい言葉を聞きながら、おれは厳しさではなく、愛情を感じとった。

おれに対する親父の愛情を感じた。親父は心からおれのことを心配してくれ、どうしたらいいかをつねに考えてくれた。

強く厳しく、愛情あふれる楽天家の父

親父は幸福で、幸運で、根っからの楽天家だった。

そばにいると、きっといいことが起きるに違いないと思えるのだった。

親父といっしょにレストランで食事をしているとき、すっかり落ちぶれた知り合いが通りかかるのを見ると、親父は外に出て行って、その人をレストランに引っ張って来るのだった。「さあ来いよ。いっしょに食べよう」と言って、ステーキ・ディナーとか、なんでも相手の食べたい物をご馳走するのだった。

とにかく親父はそういう性格だった。困っている人を見ると、黙っていることができず、いつでも助けの手を出すんだ。

おれは親父のそういうところを心から尊敬していた。

一方では強く厳しい人間だったが、その一方で、困っている人にはすぐに同情する、愛情溢れる人物だった。

おれ自身にはそういうところが欠けている。