全体計画は存在せず、住宅数について誰も管理していない状況なのだから、空き家が増えるのも当然といえば当然。高度経済成長期には、ただただ新築を造りまくればよかったが、もはや必要以上に造る意味はないどころか、空き家といった課題を生み出すフェーズでは、市場全体のコントロールが必要なはずだ。
空き家が増えれば新築の経済効果など意味がない
産業連関表によれば、わが国では新築住宅建設には2倍以上の経済波及効果があるとされている。3000万円の注文住宅が一つ建てられれば、資材の発注、職人の給料、そしてそれらが消費にまわるなどして6000万円の効果があるというわけだ。しかし本当にそうだろうか。
実際にはそんなに効果があるはずがない。人口減少・世帯数減少局面では、新築が一つ建てられれば、その分以上に空き家が発生する。この空き家が放置されれば倒壊や犯罪の温床となるリスクが生まれ、景観として街の価値を毀損する。こうした外部不経済がもたらすマイナスを差し引いたら、はたしてその経済波及効果はいかほどか。
しかし今のところ国は一向に住宅総量管理を行う気配がなく、新築住宅について過剰とも思える優遇を継続し、一方で空き家を量産している。住宅ローン残高の1パーセントを税金戻しする「住宅ローン控除」や、固定資産税・不動産取得税・印紙税の優遇を、租税特別措置としての特例を、もう何十年も続けているのだ。
おそらく国家が財政破綻し、無駄な金は使えないというところまで行かないと、このおかしな新築優遇は止まらないだろう。戦後のドッジラインのように、国家の補助金や国債発行に頼らない、身の丈の予算を組めるようになってからだ。
それまで無駄な公共工事のように新築は無計画に量産される一方で、空き家は増え街は無秩序に広がり、空き家対策はもちろん上下水道の修繕やゴミ収集などの行政サービス効率を悪化させ続けるだろう。