市民ランナーで「厚底」を履いていい人、ダメな人
ナイキの厚底シューズはこうした競技に出る選手だけが履ける「プロ仕様」ではなく、市民ランナーも簡単に購入できる。
米紙ニューヨークタイムズの調査でも、ナイキの厚底シューズ(ズーム ヴェイパーフライ 4%とズームX ヴェイパーフライ ネクスト%)を履いている市民ランナーは、次に記録の良いとされるシューズ(ナイキ ストリーク)よりも2~3%、一般的なランニングシューズよりも4~5%も記録が向上しているという結果が出ている。このためナイキの厚底シューズは市民ランナーにも大きな広がりを見せている。
実際の履き心地はどうか。筆者の感想は、「着地の感触は柔らかいのに、反発力があるため脚が勝手に前に出る感覚」ということになる。通常はそんなことはないが、わずか30分走っただけでハムストリングスやふくらはぎに軽い筋肉痛が起きた。一般的なシューズと比べて、脚の裏側の筋肉を使いやすくなるような設計になっている。市民ランナーが履く場合、ランニングフォームを変える必要はないが、慣れるまで時間が必要だろう。
注意してほしいのは、「ズームX ヴェイパーフライ ネクスト%」はあくまでレース用のスピードシューズだということだ。ゆっくり走るランナーが履いても大きなメリットは得られない。
同シューズは、反発力のあるカーボンファイバープレートを、航空宇宙産業で使う特殊素材のフォームで挟んでいるので「厚底」になっている。カーボンファイバープレートは硬質なため、着地時に前足部がググッと屈曲して、もとのかたちに戻るときに、グンッと前に進む。カーボンファイバープレートを曲げることができないと厚底シューズの威力を最大限に生かすことはできないのだ。
例えば、1kmあたり7分の速さでしか走らないようなランナーや、脚力のないランナーはカーボンファイバープレートの存在がかえって邪魔になる可能性がある。そういうランナーは無理して履かないほうがいいだろう。
「ズームX ヴェイパーフライ ネクスト%」などに採用されているフォームにも最大85%という高いエネルギーリターン(反発力)がある。同じフォームを使用しながら、カーボンファイバープレートが入っていない「ズーム ペガサス ターボ」のようなシューズもあるので、自分のタイプによってシューズを選ぶといいだろう。