箱根駅伝で最も目立ったのは優勝した青学より「ナイキ厚底」

今年の箱根駅伝は、青山学院大が大会記録を7分近くも短縮する10時間45分23秒で2年ぶり5回目の総合優勝に輝いた。全10区間にそれぞれどの選手を配置するか、原晋監督の采配は絶妙で、箱根駅伝を20年近く取材してきた筆者の予想をはるかに上回る快走が続出した。

その青学大の活躍以上に注目を浴びたのが、ド派手なナイキの厚底シューズ(ズームX ヴェイパーフライ ネクスト%)だった。青学大はアディダスとユニフォーム契約を結ぶチーム。前回大会ではナイキを履いていた選手はひとりだけで、他の9人はアディダスだった。今回は、10人全員がナイキの厚底シューズを着用した。そのことが箱根駅伝の歴史を揺るがすような好タイムにつながったと思われるが、原監督はシューズについて「ノーコメントにさせてください」と多くを語ることはなかった。

今回は総合成績9位以上の大学が、いずれも「11時間の壁」を突破した。好記録の背景としては、天候に恵まれたことや、選手の実力が上がったことがあげられる。しかし、それだけではないだろう。

写真=iStock.com/huasui
※写真はイメージです

箱根選手210人中177人が「ズームX ヴェイパーフライ ネクスト%」

筆者は学生時代(1995~1998年)に箱根駅伝を走った経験があるが、当時のシューズは国内メーカーのミズノとアシックスが“2強”で、その他のメーカーは少数派だった。そうした状況が近年になって激変している。

2017年大会のシューズシェア率は、アシックスが31.9%、ミズノが25.7%、アディダスが23.3%、ナイキが17.1%、ニューバランスが1.9%だった。さらに、ナイキの厚底シューズが登場したことで、勢力図が大きく変動する。

2018年大会のシューズシェア率は、ナイキが27.6%でトップに立ったのだ。この年、ナイキを履いていた59人の選手中41人が厚底シューズ(当時は「ズーム ヴェイパーフライ 4%」)を着用していた。

そして、前回2019年大会では41.3%の選手が「ズーム ヴェイパーフライ 4% フライニット」を中心とするナイキの厚底シューズを着用。今回2020年大会は84.3%(210人中177人)が昨年7月に一般発売された「ズームX ヴェイパーフライ ネクスト%」を履いて出走した結果、10区間中7区間(2、3、4、5、6、7、10区)で区間記録が誕生している。