人権の話ができるのは日本だけ

【ウォーカー】たしかに安全保障は弱い。そして経済は力があるけど、テクロノジーは20年投資していないから弱い。では、日本の強みは何かと言うと、それはソフトパワーです。たとえばカザフスタンの人たちは日本が大好き。軍事はロシアで、経済のチャンスは中国からもらえるが、人権の話ができるのは日本だけ。米国は遠くて、欧州からは気にかけられていない。その点、日本は西側の代表だと思われている。

僕は日本にいたとき合気道をやっていました。相手が打ちかかってきたら打ち返すのでなく、相手の力を使って他の方向に逸らせるのが合気道。日本は外交でもそれができるはずですよ。

【三浦】そうですね。ソフトパワーは軍事力などのハードパワーと比べて軟弱と思われがちですが、国益のための外交戦略としたら最強のもの。各国のリーダーたちの懐に入っていくだけでなく、一般の国民に対しても適切なパブリック・ディプロマシーで浸透していくことが大切です。ジョシュアはこのたびニューヨークのジャパン・ソサエティーの理事長になりましたが、日本のソフトパワーを海外に伝えるという意味では責任が重大です。

【ウォーカー】僕が思うに、日本人は自分のことを伝えるときに恥ずかしがりすぎます。米国みたいに「なんでも自分が一番」と言いすぎるのもよくない。真ん中くらいがちょうどいい。日本が元気に自分たちのことを伝える手伝いができればと思うんです。

【三浦】JALやANAの国際線に乗ると、舞妓、富士山、寿司のおもてなしCMが流れます。私は舞妓さんは好きだけど、普段会いませんよ。「外国人はこれが好きでしょ」というお仕着せではなく、日本人が日々楽しんでいる文化を紹介したほうがいいと思います。ジャパン・ソサエティーも、歌舞伎や生け花のような上品な文化に加えて、たとえばラーメンを紹介してもいい。

【ウォーカー】僕の友達が日本に来ても、「懐石料理もいいが、カレーと餃子食べて、カラオケに行きたい」と言うんです。温泉もいいですね。ジャパン・ソサエティーがあるニューヨークは「メディア」として考えれば世界一のステージで、ここで売れれば世界中どこにでも売れるでしょう。

【三浦】ジャパン・ソサエティーはこれまで日本の素晴らしい文化を紹介してきました。今度は、日本が世界に提供できること・ものは何かという見地から発信していただきたいと思います。まわりを見回せば、韓国系の団体は日々戦略的に影響力を高めています。日本らしい互酬的な、しかし戦略的な活動をしていただきたいですね。

【ウォーカー】これまで日米両国の重鎮が務めてきた理事長職に、三浦さんと同い年の僕が選ばれたことには大きな意味があると思っています。日本の文化をスーパーパワーにして、世界のために使えるようにしたい。期待していてください。

(構成=村上 敬 撮影=大沢尚芳)
【関連記事】
韓国の本音「米国のせいで日本と断絶できない」
なぜ文在寅の「日本叩き」はこれほどウケたのか
安倍氏が嫌うほど浮上する「石破首相」の現実味
「桜問題」から逃げ続ける安倍首相の甘い見通し
習近平の本心「米国生まれなら共和党に入った」