原油価格上昇が日本に悪影響を与える理由
米国とイランとの緊張関係で株価が大きく反応した背景をもう少し詳しく分析しましょう。
前述したように、日本は原油高に弱い経済構造です。原油が高騰すると輸入物価とLNGの価格が上昇します。原油やLNGの輸入に占める割合の高い日本の場合、それが輸入物価に与える影響が極めて大きいのです。
もし、1バレル70ドルを超える状態が続けば、今後、ガソリン価格のみならず電気、ガス料金などの上昇、さらには、石油化学製品などの上昇は容易に想像できます。
図表1は日本の輸入量の多い中東産原油の指標であるドバイ原油価格(1バレル・US$)と輸入物価、企業物価、消費者物価(除く生鮮品)の数字(2018年1月~)を表したものです。
図表1を見ると、2018年3月にドバイ原油が70ドルを超えてから数カ月後に輸入物価が上がり始めたのがわかります。2017年のこの時期の原油価格は50ドル前後でしたから、かなり大きく上昇しました。
原油価格の上昇は船で輸送する関係から1、2カ月ほど遅れて輸入物価に影響を及ぼします。2018年8月には80ドルを超えていた原油価格ですが、年末に60ドル前後まで下がっています。輸入物価もそれに数カ月遅れて下落、その後は前年比で下落という状況が続きました。
原油を筆頭とする輸入物価に呼応して動くのが、企業の仕入れを表す「企業物価」です。企業の仕入れは、輸入物価の動きほどの大きさではありませんが、ほぼ輸入物価に連動して動いているのが分かります。そして、「消費者物価」も企業物価の動きほどではありませんが、連動していることもお分かりいただけるでしょう。
つまり、原油価格の上昇は輸入物価の上昇をもたらし、それが企業物価の上昇を通じて消費者物価に影響を及ぼすのです。消費者物価が上がれば、当然、モノは売れにくくなり、日本経済に悪影響を与えることになるのです。問題はモノが売れにくくなることだけではありません。