ところで、中国ではこれほど赤が多用されていることが海外にも伝わり、日本でも町の中華料理店などでは、赤がよく使われています。日本だけでなく、欧米のチャイナタウンなどでも同様で、中華料理店といえば赤い装飾、というのは世界共通の決まり事のようです。

「日本ではちょっと誇張され過ぎな気が……」

しかし、私が取材したある30代の中国人は「日本ではちょっとそれが誇張され過ぎているような気がするのですが……」と耳打ちしてくれました。

その中国人によると「もちろん、中国でも春節などの時期は赤い飾りつけだらけになります。それは事実ですが、それ以外では、実はもう、あまり赤色を使わなくなってきています。たとえ使うとしても、もう少し洗練された雰囲気に変化してきているんですよ」といいます。

確かに、上海などのおしゃれな中華料理店に行くと、日本の町の中華料理店などで見かける赤いちょうちんや赤いテーブルなどは一切ありません。むしろ、黒と白を基調にした調度品や、暗い照明が多かったりします。

中国人の「色」に対するイメージや使い方は、社会の成熟化とともに変わってきているようなのです。

たとえば、都市部の結婚式を見てみると、西洋にならい、かなり以前から花嫁は純白のウエディングドレスを着るようになりました。赤い生地の伝統的な衣装、旗袍(チーパオ=チャイナドレス)も着ますが、それはどちらかというとお色直しで着ることが多く、都市部の若い女性の間では、断然、白いドレスのほうが人気です。

中国ではもともと白は縁起が悪い色でした。かつて日本も同じでしたが、白は悲しみを表す色で、葬儀のときに着用するものでした。ですが、西洋化の波に乗り、今では中国人もおめでたい席で白を着ることにまったく抵抗がなくなりました。

日本人男性の礼装は「まるでお葬式のようだ」

ただし、日本人の男性が結婚式のときに、黒いスーツに白いネクタイを絞めるのは、彼らの目には「まるでお葬式のようだ」と映り、初めて見かけたときには仰天するそうです(中国でお葬式にそのような服装をするという意味ではなく、白と黒という組み合わせが、そう連想させるようです。それを聞いた日本人も「そうだったのか!」とビックリしますが)。

ちなみに、私の日本人の友人は、息子の結婚式に貸衣装の紋付き袴で出席し、その写真を中国のSNSに投稿したところ「どこのやくざの親分かと思った」と中国人にびっくりされ、大笑いしたと話していました。

2018年、中国・深圳にオープンした日系のMUJI HOTELは中国人の間で大変人気がありますが、このホテルでは、赤や金、黄色など中国人が好みそうない色は一切使われていません。それが逆に中国人にウケていることからもわかる通り、派手な色彩だけが中国人に歓迎されるわけではなくなってきています。

中国でも都市部の人は、ファッションやインテリアを選ぶとき、白や黒、グレーなど飽きのこない色、目立たない色を選ぶようになりました。