島田が体をソファから乗り出す。
「何が一番儲かるかというのは、利益率の問題なんです。利益率から優先順位をつけて、正しい商品設計をひいていけば、ロードマップをひくのはそんなに難しくはない。まずは現実的な分解、楽天的にいうと因数分解して……」
そういって、島田は応接室の壁にかかっている額縁のコンセプトを指差した。「仮説→実行→検証→仕組化」。
「検証して、成功であれば、仕組化する。それをくるくる回していくのです。これが楽天の経営スタイルですから」
もちろん、実行するのは人である。球団には創設と同時に様々なところから人を集めた。現在、球団の従業員が約120人。いわば寄せ集めの「エリート集団」である。職業意識、文化のちがう人々をどうひとつのアングルに向かわせていくのだろうか。
「基本的にしっかり目標設定する。大前提は企業としてのミッションというか、大げさにいうと哲学的なものを共有することです。そして現場をしっかり巻き込めるような会議体を設計していって、現場のアイデアを取り込んでいける仕組みづくりをすることです」
とくに自由に議論していくプロセスが大事だと島田はいう。審議事項を明確にし、議論を重ねていく。セクションごとの会議のほか、マネジャー会議、部長会議が週1回は開かれ、取締役会議が月1回のペースで行われる。
「ちゃんと調査をして、仮説を立て、こういう実験をした結果、こうこうだったから、これだけのお金を使ってやりたい。ひいてはこういうリターンを生む予定であるとしっかり提案させます。コミュニケーションに対して、すごく時間を使っている会社です」
情報の共有、公開、透明性でいえば、Eメールの活用が興味深い。誰かにメールを送るとき、「野球団オール」というアドレスに送ると、全社員にメールが届く仕組みになっている。