しかしながら、国内的にアメリカ社会が敵を必要としているということを認識しなければなりません。ヨーロッパはこれまでの悲劇を分かっているので、自分のアイデンティティーを考えるべきであって、敵を考えるべきではないということを知りました。

友人によって、我々のアイデンティティーは決まるのであり、敵によって決まるのではないということを知りました。個人的な生活においてもそうだと思います。敵があることによって自分が決まるのではなくて、友人の存在で自分が決まるのです。

「ヨーロッパに移民の津波がある」というのはウソだ

――アタリ氏はポピュリズムについて語り始める。世界で同時多発的に台頭するポピュリズムによって世界の混乱がさらに広がるという見方が多い。欧米での反移民の動きやイギリスの欧州連合(EU)離脱も、ポピュリズムがまん延する影響を受けたものだという分析もある。しかし、アタリ氏は冷静な対処を呼び掛ける。

ポピュリズムの台頭は、我々をどこに連れていくのでしょうか。本当に撹乱かくらんするのだろうか。ヨーロッパに、ポピュリストが存在することは否定できません。イギリスやハンガリーもしかり。各地でポピュリスト的なリーダーが生まれています。

イギリスはEUからの離脱を決めました。しかし、一方でEU加盟諸国にとって、離脱のコストはどんどん高くなっています。欧州の中で10カ国ほどのEUの非加盟国がドアをたたいて「入りたい」と希望しています。つまり、EUは人気があって、現在、ポピュリストがリスクになることはないと思います。

もちろん、妄想のようなことはあります。例えば移民の問題。私の国・フランスの人口は7000万人で、本年度、フランスで公式に発表された移民の数は7万3000人です。つまり移民はフランス人口の1000人に1人にすぎません。移民が大変な数になっているというのはファンタジーにすぎず、ヨーロッパに移民の津波があるというのは全く事実ではありません。今はリスクはないと申し上げたいと思います。

(構成=プレジデントオンライン編集部)
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