「健康的、手が汚れにくい、コスパよし」

「仕事中に食べるおやつとしては、世の中の変化も大きいと思います。職場環境や商品にもよりますが、執務中に何か食べても、とがめられない時代になりましたから」(吉川さん)

例えば、昼食時や残業時以外は自席でカップ麺を食べられる会社は少ないだろう。以前も別の記事で紹介したが、気分転換や小腹満たしのお菓子として、グミには次の優位性がある。

(1)健康イメージがよい
(2)一定の腹持ちで、後ろめたさが少ない
(3)手が汚れにくい
(4)パパッと簡単
(5)1回当たりのコスパがいい

それぞれ簡単に説明すると、(1)は果肉や果汁由来の品が多く、メーカーも訴求に力を入れる。例えば「果汁グミ ぶどう」(明治)は、パッケージの表に「くだもの食べよう。」「ぶどう果汁100」「着色料不使用」を明示。裏には「噛むコラーゲン2700mg入り」と記す。

「コラーゲンを訴求し始めたのは2000年ごろからで、現在のマークは2012年に入れました。どうせ食べるなら、おいしくて少しでも身体にいいものを、の視点で訴求しています。ちなみに、果汁グミの顧客層は女性が約7割、男性が約3割。30代と40代が中心です」

杉山ひかりさん(カカオ開発部)はこう説明する。ちなみに吉川さんも杉山さんも営業出身。かつては自社商品を取り扱う問屋や小売りとも直接向き合ってきた。

日本で最初のグミは明治の「コーラアップ」

(2)は果汁などをゼラチンで固めており、腹持ちがよい。また仕事中という後ろめたさもあり、例えばかみ続けるガムは周囲の目が気になる。かんだ後の捨てる行為も面倒だ。(3)は、パソコンやスマホを操作しながらの仕事が多い人、現場作業をする人は、手が汚れるとストレスだろう。砂糖をまぶしたタイプのグミもあるが、それが手につかない工夫はしているようだ。

同社カカオ開発部の杉山ひかりさん(撮影=プレジデントオンライン編集部)

(4)は気分にもよるだろう。「エネルギーを補給したい」ときにゼリー飲料やエナジードリンクを飲む人もいる。個別包装の栄養機能食品を食べる人もいる。そうした“見えない競合品”に比べ、(5)で記したように、グミはコストパフォーマンスに優れているのだ。

ここまでグミが一般に浸透したのは、明治の役割が大きい。

「日本でグミが発売されたのは1980年で、当社の『コーラアップ』でした。そして『果汁グミ』発売が1988年。当時から若い女性に訴求していました。それが健康意識の高まりや仕事中の忙しさも手伝い、ここまで市場が拡大したのです」(吉川さん)

もともと女性訴求で、それに健康志向が加わり、現在も約7割が女性なのだろう。