住宅ローンを増やしただけのマイナス金利政策

そもそも金融緩和とは、金融市場に大量の資金を供給して金利を引き下げ、需要を刺激する政策だ。大量の資金を供給することで極短期の特定の金利(つまり政策金利)を低く誘導し、低金利環境を整えるのである。その政策金利は、伝統的にマイナス圏に引き下げることはできないとされてきた(金利の非負制約)。

2008年秋に生じたリーマンショック以降、各国の中銀は金融緩和を強化し続けてきた。その結果、政策金利はゼロまで達してしまった。それでも財政や景気を支えるために金融緩和を強化しなければならないと考えた各国の中銀は、政策金利やその一部の金利などをマイナス圏に引き下げて、金融緩和の強化を試みた。

厳密にいえば、各国で採用されているマイナス金利の仕組みはそれぞれ異なる。共通していることは、銀行が中銀に必要以上に預けている資金(超過準備)に対して手数料を徴収することだ。事実上の罰金を支払うくらいなら銀行は超過準備を取り崩し、貸出を増やすはずだ。それが景気の押し上げにつながると、各国中銀は考えたわけである。

スウェーデンでは住宅価格が急騰し「住宅バブル」に

確かに銀行は貸出をある程度は増やした。ところが中銀の狙いとは裏腹に、増えた貸出は企業の設備投資用ではなく家計の住宅購入用であった。その傾向が顕著だったスウェーデンの場合、家計の債務残高はマイナス金利導入前の14年末時点で対GDP比82.7%であったのが、19年第2四半期時点で88.1%にまで膨らんだ〔出所は国際決済銀行(BIS)〕。

なおリーマンショックが生じた2008年時点におけるスウェーデン家計の債務は、対GDP比68.6%であった。その後、度重なる金融緩和の結果、需要が刺激されて住宅ローンが急増した。結果として住宅価格も急騰し、住宅バブルの様相を呈していたが、マイナス金利の導入はこの流れにさらに拍車をかけるものになってしまった。

スウェーデンの住宅価格は2017年ごろから下落に転じたとはいえ、水準はまだ非常に高い。事態をこのまま放置しておけば、住宅バブルがさらに膨張することになりかねない。それにバブルが崩壊すれば、マイナス金利で収益力が弱まった銀行に不良債権問題が追い打ちをかけることになるため、金融危機が生じると警戒される。