多くの温泉やスーパー銭湯は、入れ墨をした客の入浴を禁止している。一方、街の銭湯にそうした掲示はない。理崎智英弁護士は、「銭湯は地域住民の日常生活において保健衛生上必要なものとして利用される施設であり、公共性が高い。そのため、入れ墨をしているという理由だけで入浴を拒否することは、法律に違反する可能性がある」という――。
写真=iStock.com/QOcreative
※写真はイメージです

「公衆浴場法」という法律

私はよく子どもを連れて銭湯に行くのですが、入れ墨をしている人も普通に入浴しているのを目にします。私は特に気にはしませんが、怖いと感じる人もいるかもしれません。

銭湯側は入れ墨をしている人の入浴も認めているということですが、それでは、銭湯側は、入れ墨客の入浴を拒否することはできないのでしょうか。

入れ墨客の銭湯入浴拒否について法律上の問題点について検討したいと思います。

公衆浴場法では、伝染病にかかっていると認められる人に関しては、銭湯側は入浴を拒否しなければなりません(公衆浴場法4条)。

また、同法では、銭湯側は、浴槽内を著しく不潔にし、公衆衛生に害を及ぼす虞のある行為をする人については、入浴を拒否することができると定められています(公衆浴場法5条)。

なお、いわゆるスーパー銭湯や温泉は、「その他公衆浴場」に分類され、物価統制令による入浴料金統制を受けません。つまり、低料金で統制されている銭湯よりも公共性が低く、入浴客を選ぶ権利も比較的あるとされています。そのため、スーパー銭湯側の判断で、特に法律の根拠なく、入れ墨客の入浴を拒否することも容認されていると言えます。