デジタル家電のような“組み立て型”にシフト

従来、自動車は、レシプロ型(ピストン機関を搭載し化石燃料を燃焼させることで動力を得る)エンジンを搭載し、人間が運転する移動の手段などとして扱われてきた。エンジンを中心に、自動車には約5万点もの部品が搭載されてきた。部品点数が多い分、安全性はもとより、免振、騒音のカットなどに高い技術力が要求される。日独の自動車業界は、すり合わせなどの技術力に比較優位性を発揮し、世界の自動車業界をけん引してきた。

一方、現在は、モーターを搭載し、SNSプラットフォームと相互に自律的に通信・制御する“動くITデバイス”としての自動車開発が目指されている。電動化に伴い、自動車の部品数は従来の半分程度に減少すると考えられる。自動車の生産は高度なすり合わせ技術に依存したものから、デジタル家電のような“組み立て型”にシフトし、水平分業体制が重視される展開も考えられる。

自動運転を支えるテクノロジー面では、従来の自動車企業よりもIT先端企業に比較優位な部分も多い。その考えから、米グーグルや中国バイドゥ(百度)などと連携する自動車企業が増えている。

世界的に自動車企業の合従連衡が進む

そうした変化に対応し競争に勝ち残るため、世界的に自動車企業の合従連衡が進んでいる。くわえて、IT先端企業や先端テクノロジーの開発に強みを持つスタートアップ企業との連携を重視する完成車や自動車部品企業の経営者もいる。異業種も巻き込み、自動車業界の業界再編が続くだろう。

世界の自動車企業は米中の貿易摩擦や、それに伴う世界的なサプライチェーンの混乱などにも対応しなければならない。サプライチェーンの再構築にはコストがかかる。同時に、EVの研究・開発や生産体制も整備しなければならない。自動運転などに必要な先端テクノロジーの開発に向けた人材確保、設備投資の負担も増す。

企業が変化やリスクに対応しつつ成長を実現するには、安定した経営基盤、資金力をつけることが欠かせない。自動車企業がライバル企業との提携、あるいは経営統合を通して大規模かつスピーディーな研究・開発体制の整備に取り組むことの重要性は高まるだろう。