スコットランドでは独立機運が強まっている
経済の問題ばかりではない。この間の交渉の膠着で、EU離脱を望む老年層と残留を望む若年層の、また離脱を望む地方と残留を望む首都ロンドンの対立はさらに深刻化した。またスコットランドで独立党の勢力が急伸したように、スコットランドでは英政府に対する不信感が高まり、独立に向けた機運が強まっている。
EU離脱後の英国は経済、政治、社会のさまざまな面で苦難に見舞われることになる。しかしながら、そうした文字通りの国難を乗り越えるだけの戦略をジョンソン首相やその側近がきちんと描けているかと言えば、かなり疑問である。いわば英国は、海図なき航路を突き進まざるを得ない状況に置かれている。
英国のEU離脱をめぐっては、二転三転する英国の情勢を受けて、EU各国や高官の間にも深刻な「疲れ」が生じていた。われわれのような分析者や観察者もまた、煮え切らない英国の態度に振り回され続けてきた。今回の総選挙の結果を受けて、少なくとも英国がEUを形の上だけでも離脱する展望は描けたことになる。
今後の注目点は、1月末にも予想されるEU離脱に伴う混乱をジョンソン政権がどのように対処していくのかに移った。うまく手綱を扱うことができれば、ジョンソン首相は誉れ高い名相として、歴史に名を遺すだろう。しかしながら、典型的な日和見主義者であるジョンソン首相にそうした度量があるかどうか、筆者は疑っている。