雇用流動化と働く人の選択肢を用意すること

——雇用の流動化は「生産性」の向上につながりますが、働く側にとっての負担が大きいとも言われています。

将来的に定年が75歳くらいまでに引き上げられることを見越して、大手企業は希望早期退職者の年齢を55歳から45歳に下げました。でも実際はその年齢で退職する人はまだ少なく、活躍できなくても会社にとどまり続ける人が多いんですよ。

生産性の低い人材を預かり続けるのは企業にとってコストです。それは当人にとっても幸せではない。活躍の見込める違う場所へ積極的に動いてもらったほうがいいと思うんです。

たとえば、フランチャイズ業界。今までずっとコンビニで働いてきた人がいたとして、コンビニはもう飽和状態ですよね。そこで働き続けるよりは、新しい産業でフランチャイズのノウハウを活かせる機会があれば、働く場所を移って活躍してもらった方が良いのではないかと思うんです。企業はスキルや知見を持った人に投資したいと考えますから、そのほうがきっと給料も上がりますよ。

アイリスオーヤマは2012年に家電事業に参入し、そのとき家電メーカーのOBを大量採用しました。その後6年でグループ売上が2400億円から4750億円に上がったのですから、雇用の流動化が生産性を高め、働く人の幸せも高めることを示す良い事例だと思います。

——雇用の流動化と合わせて働く人に選択肢を準備しておくことが重要というわけですか。

「本当は正社員で働きたいけれど、不本意にも派遣で働いている」という方も世の中にはいます。でも、正社員にこだわるなら仕事なんて山ほどあるんです。それなのに、なぜそうした人が存在しているかというと、仕事を選ぶにあたっては仕事内容や働く場所などさまざまな要素が絡むからなんですよね。

「非正規雇用でもいいから、やりたい仕事をしたい」という人がいたときに、私たちは選択肢を極力多くして、本意の仕事が選べる環境を用意していきたいと思っています。

また、ベストな働き方は人生のその時々によっても変わります。今フリーランスがいいと思っている人も、10年経つと正社員になりたいという考えに変わっているかもしれない。そんなふうに、ライフステージによって変化する希望にも柔軟に対応できる選択肢を作っていきたいです。