交代制で飛行中に休憩できる戦闘機

B‐29などの戦略爆撃機は、長い距離を飛んで爆撃任務を行います。爆撃機を守る護衛戦闘機のパイロットは、その間ずっと1人で機体を操縦しなければならないため、非常に大変です。こうした事情からアメリカ軍は、パイロットの負担が少なくて済むように、2人交代で操縦できる戦闘機の開発を求めました。その結果、普通の戦闘機を横に2つつなげるという、とてもおかしな形の飛行機が1946年に登場してしまったのです。

イラスト=ハマダミノル
2人のパイロットが交代で飛べば、長距離飛行も楽? F‐82ツインマスタング

F‐82ツインマスタングは、P‐51マスタングという戦闘機の翼同士をつなげた形をしています。コックピットもちゃんと2つあり、どちらか一方のパイロットが休憩中でも、もう片方のパイロットが操縦できるようになっていました。

一見すると合理的な考え方ですが、さすがに2つの機体を直接くっつけるのはうまくいかなかったようで、翼を再設計したりエンジンを調整したりと、普通に造るより余計に手間がかかってしまいました。

ドイツの鬼才フォークト博士の珍作

普段はあまり意識しませんが、飛行機は左右対称が当たり前。なぜなら、そうしないと機体のバランスが崩れて墜落してしまうからです。しかし、そんな飛行機の常識を超える左右“非対称”機にこだわった設計者がいました。その人物はドイツのリヒャルト・フォークト博士。彼が考えた飛行機で最も有名なのがBV141です。

イラスト=ハマダミノル
エンジンとコックピットを分離し、偵察機として見晴らしの良さを追求したBV141。

BV141はエンジンとコックピットが別々に分かれたヘンテコな形をしています。これは「見晴らしのよい偵察機を造る」という考え方から生まれたもので、確かにこの形ならエンジン部分が邪魔にならず、とてもよい視界が得られます。問題はその性能ですが、実際に飛ばすと思いのほか安定しており、軽やかに飛ぶ姿は関係者を驚かせました。

結局BV141は採用されませんでしたが、フォークト博士はこの経験から、斬新すぎる形の飛行機をどんどん設計していくようになります。そのなかからほんの一部をご紹介しましょう。