「桜」を聞きそうな社を意図的に指名しなかった可能性

ただし、この記者会見には「からくり」がある。会見場には「桜を見る会」の質問をしようと待ち構えていた記者はたくさんいた。しかし、事務方は「桜を見る会」以外の質問をしそうな社(もしくは記者)を優先的に選んだ可能性があるのだ。

この問題を積極的に追及しているのは、朝日新聞、毎日新聞、東京新聞など政権に批判的な論調の新聞。さらに情報番組も含めて連日取り上げているTBS、テレビ朝日など民放テレビも積極的だ。

先ほど紹介した質問した社をあらためて確認してもらいたい。「桜を見る会」の質問をできるだけ避けたい安倍氏の思いを、司会進行の事務方が忖度そんたくしたと言われてもしかたがない。

「憲法」「解散」にマスコミの関心をそらす操縦術

安倍氏は会見で憲法改正について「決してたやすい道ではないが、必ずや私の手で成し遂げていきたい」と発言。衆院解散の可能性については「国民の信を問うべき時が来たと考えれば、解散総選挙を断行することに躊躇ちゅうちょはない」と答えた。どちらも従来よりも、踏み込んだ発言だ。

改憲に強い決意を示し、その流れ次第では年明けの解散に踏み切る考えを表明した、と見る向きもあるだろうが、実際はそうではない。安倍氏は、憲法改正や衆院解散という政治課題について強めの発言をすることで、報道陣の目をそちらに向けさせ「桜を見る会」の報道を押さえ込もうとしたのだろう。政治記者は「憲法」「解散」という言葉には過敏に反応する。その「癖」を知り抜いた高等テクニックだ。

実際、翌10日の朝刊では「桜」よりも「憲法」が大きく扱われた社があった。質問者の「選別」も含め、安倍氏による巧みなマスコミ操作が際立った記者会見だったと言える。

記者会見は逃げ切り、国会は閉幕した。安倍氏はこれで「桜」政局の大きなヤマを越えたと考えていることだろう。しかし、それは甘いということは指摘しておきたい。