<div>曽山哲人氏</div>
曽山哲人氏

入社して1年目のセールスパーソンの多くが通る道が「お客様の言いなりになってしまう」ことです。

なかなかお客様から受注が取れない人に「どうして取ってこれなかったの?」と上司が聞くとこんなふうに答えます。

「お客様がやりたくないとおっしゃるので」

あなたが上司だったらどう思いますか? 単に相手の言いなりになっているだけだろう、と思うかもしれません。「やりたくないですね」と言われて「そうですか」と同調して戻ってきてしまう。これでは「商品を持ってきました」「説明をしにきました」というだけのメッセンジャーです。

とはいえ、「興味ないんだよね」「予算がないから」と言われたら、ふつうは終わりだと思いますよね。ひどいときには「何をしにきたの?」とさえ言われることもあるかもしれません。こんなふうに言われると萎縮してしまい、もっと意見が言えなくなる気持ちもわかります。

でもそこで引き下がらない。「お話だけでもきいていただけますか」の一言が出れば、もしかしたら「興味がない理由」や「将来は予算がとれるのかどうか」といった情報だけでもつかんで帰ることができるかもしれません。

なぜその一言がいえないのか。それは他責の考えで自分を守っているからです。お客様に嫌われたくないという気持ちがある一方、無意識で営業活動がうまく進まないことをお客様のせいにしてしまっているのです。

サイバーエージェントのある営業幹部が、この状態の新入社員に良い投げかけをした事例があります。「お客様にご予算がないとのことです」と新人の営業マンが報告をしてきた時に、その上司は「お客様に広告を出す予算がないのか、それとも君に預ける予算がないのか。どちらなんだろう」という質問を投げかけたのです。それの質問で強く自問自答した新入社員は奮起して営業活動を成功させたという話もありました。

前提ばかり話し続けている人は相手の言いなりになる

 お客様に意見が言えない人の特徴は、社内でも見抜くことができます。上司への報告、会議の場などで、「で、結論は何なの?」とよく言われている人はいないでしょうか。

「それは、○○が○○なので、○○して○○で……」と前提ばかりを長々と話していて、「△△です」と結論や自分の意見を言い切れない人です。この「前提ばかり言うワナ」にはまっている人は、お客様の前でも同じような話し方をすることが多いようです。

相手は意見や結論を知りたがっているのに、延々と前提ばかりを聞かされるのは苦痛でしかありません。ましてや意見がないわけですから、最終的に相手の言いなりになってしまうのです。

デキる営業とは、顧客の満足と会社の満足と両方当時に満たせる人のことです。お客様を満足させてなおかつ、会社にも利益貢献する。それには、どちらかだけの言い分だけを聞いていてもダメなのです。

意見が言えないワナを外すには、自分の考えや意見をどんどん出していくことです。営業トークに正解はありません。相手の話を聞くのはニーズをつかむ上では大切です。そこでより成長角度を上げたいのなら、「たとえばトーク」が使えるかもしれません。「たとえばこういう考え方はいかがですか?」「たとえば、○○はどう思いますか?」など、自分なりの意見を相手にぶつけていきながらヒアリングするのです。もちろんそれには業界のこと、お客様の事業の内容をよく勉強し、仮説を立てていかなくてはなりませんが、お客様の反応を見ながら対話をすることができるようになります。

「こんなことができたらいいと思いませんか」「業界的にはいま、これが話題ですよね」と、こちらから意見を言えば思いのほか、ぐんと好印象を持たれることに気付くでしょう。一瞬、相手は「何?」という顔をするかもしれませんが、話していくと「ああ、それはあるね」「そう、いまうちの会社でもいろいろ考えているところだよ」と、会話がつながっていくのです。