金言4:社長が見るべきはP/LよりB/S
企業は「赤字」でも倒産しない
企業は赤字でも倒産しません。倒産するのは現金がなくなるからです。「黒字なら倒産しない」「赤字だから倒産する」と短絡的に考えるのは、経営をP/L(損益計算書)だけで判断しているからです。B/S(貸借対照表)ベースの経営をすれば「倒産の仕組み」に気がつきます。
P/Lは、1年間にいくらの売上があり、いくらの経費を使い、いくらの利益(損失)が出たかをまとめたものです。これに対してB/Sは、決算日現在の会社に資本金や利益余剰金(純資産)がいくらあり、いくらお金を借り(負債)、どう運用されているか(資産)を示します。「資産」の額と「負債」「純資産」の合計額は、バランスがとれて同額になります。このバランスが崩れて「負債」が「資産」を上回れば、債務超過となり、会社は倒産に向かいます。
事業経営は「お金が回ること」が何よりも重要です。会社にキャッシュがあるかどうかは、B/Sの「資産の部」の「流動資産」の科目のトップにある「現金預金」を見れば、一目瞭然です。この数字に厚みがあれば、会社は倒産しません。また、その他の資産も含めて流動性が高いほど倒産しにくい。それをチェックするために、社長はB/Sを見ます。P/Lは1年で変えられるが、B/Sを変えるには5年かかります。
金言5:「率」より「額」を見よ!
有能な社員を投入すべき事業がわかる
税理士や会計士の指導は、数字を「額(量)」ではなく「率」で見がちです。粗利益率20%で売上1億円のA事業と、粗利益率5%で売上10億円のB事業があると、数字を「率」で考える社長は、A事業のほうが優良だと考えます。
A事業の原価は8000万円、B事業の原価は9億5000万円。B事業のほうが多額のお金がかかっているのに粗利益が低く、資金効率が悪いと考えるわけです。しかし、この見方が間違っていることは、利益額を計算すればすぐにわかります。A事業が生む利益は2000万円、B事業は5000万円。「額」で考えれば会社への貢献度はB事業が圧倒的です。
ここを理解していない社長は、A事業に有能な社員を投入して、会社の屋台骨を支えるB事業を台無しにしてしまいます。結果として、会社は傾きます。経営を支えるのは「率」ではなく「額」です。税理士や会計士は「総資本利益率(RОA)」「自己資本利益率(RОE)」「自己資本比率」「売上高営業利益率」「総資本回転率」など「率」によって会社を評価します。しかし、これらの指標を理解しても経営の道具には使えません。
数字を「率」で見るクセがついてしまった社長は、基本の「+」「-」に立ち返るべきです。