密葬や家族葬では
香典収入が少ない分全額遺族持ち出しも
密葬・家族葬・無宗教葬を希望する人が急増している。2005年にリリーフが実施したアンケート調査では、有効回答者数165人のうち、39%の人が「家族と親戚まで」の密葬を、40%が「家族だけで行いたい」と家族葬を選び、合計79%にも及んだ。その理由は、「参列者が高齢のため、葬儀に来てもらうのは悪い」「大きな葬儀を行うほどのお金がない」「疲れる葬儀はしたくない」など、さまざま。
密葬・家族葬が注目を集める背景には、葬儀に対する優先順位が変わってきていることが大きな要因だ。世間に死去を知らせ、お別れに来てもらうという「対外的な意味合い」から、故人と家族のお別れを優先する「個人的な意味合い」へと変化しつつある。
そもそも密葬・家族葬とは、「葬儀の大きさ=規模」を表す名称だ。葬儀の規模とは「葬儀を知らせる範囲」のことで、故人と家族の関係各所に広く知らせるのが「一般葬」、対外的には知らせず家族と親族、親しい友人までで行うのが「密葬」と呼ばれている。
これに対して「家族葬」とは、密葬の範囲をさらに狭め、家族を中心に行う葬儀のこと。親族が遠方で高齢者が多いときなどは、密葬よりも家族葬を行うケースが多い。なお密葬・家族葬ともに、内容は一般葬と同じ仏式の葬儀が主流となっている。
密葬・家族葬は規模が小さい分、祭壇も小さくてすみ、参列者への接待費用もかからないことから、安い費用でできる葬儀と思われがちだが、必ずしもそうとは限らない。参列者からの香典収入がない分、全額が遺族の持ち出しになる場合もある。
仮に参列者200人の一般葬費用が総額200万円、親族だけの密葬が一般的な相場ともいえる総額100万円だったとしよう。一般葬のほうで1人当たり平均7000円、合計約140万円の香典収入が見込めるとしたら、遺族の持ち出しは60万円となる。一方の密葬では、親族10名が3万円ずつ包んだとしたら、遺族の持ち出しは70万円。つまり一般葬よりも10万円ほど高くなるのだ。このように葬儀代の総額では密葬のほうが安くても、遺族の出費となると一般葬のほうが少なくなるという逆転現象が起こるのだ。