行政はノータッチ!
指定業者の悪徳商法を見破るチェック法は

葬儀費用の全国平均は231万円――。日本消費者協会が2007年12月に発表した最新の費用相場だ。5年前の調査と同水準を保っており、相変わらずの高価格を維持している。

そんななか、市区町村などの自治体にある「市民葬」や「区民葬」といった低価格葬儀に関心をもつ人もいる。葬儀に必要とされる最低限のものを低価格で行えるよう、自治体が制度として設けているもので、特に所得制限などはなく、死亡者か葬儀を主催する親族が該当地域に住んでいれば、誰でも利用することができる。

しかしその名称からか、多くの人が誤解している点もある。区民葬を終えてから、「こんな内容とは思わなかった」という相談も寄せられている。代表的な誤解を3つばかり紹介しよう。

まず、行政の制度として施行するから安心だという誤解。確かに市民葬・区民葬の内容を設定しているのは行政だが、葬儀の施行には一切関与しない。利用申請を受け付ける窓口があるだけで、葬儀の相談やサービスの問い合わせには対応できないのが実態だ。行政が葬儀の一部分の内容と価格を設定し、協定を結んで指定された葬儀業者がそのままの内容で施行する。葬儀に不満が残ったとしても、役所にはその窓口がないため、せいぜい消費者センターの電話番号を教えられるだけだ。

次に、指定業者なら、行政が葬儀内容を審査しているから安心との誤解。指定を受ける業者は、行政が葬儀内容を審査して決めているわけではない。チェックするのは開業年数くらいで、サービスの質やオプションの料金などは審査もチェックもされない。安心でサービスが良いどころか、むしろ人件費も削ってあるため、サービスの質は落ちると思ったほうがいい。一部では「儲けにならない客だから」と、通常の仕事よりも手を抜いた対応になるという声も多く聞いている。

3つめは「安い」との誤解。これは最低限のものだけをセットにし、なおかつ質も抑えているため、結果として安くなっているだけ。葬儀に必要なものの中から「一部だけ」を抜き出し、足りないものを料金に入れてないのだから、当然安く見える。また「補助金で安く行える」も誤解で、行政からの補助金は一切出ておらず、協定で内容と金額を定めているだけにすぎない。

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落とし穴はほかにもある。オプション価格がそれだ。東京都の区民葬を例にとって説明すると、区民葬で料金が定められている項目は、祭壇、棺、設営・撤収の人件費、霊柩車、火葬の料金、骨壷など。

だが葬儀には、このほかにも図のようなものが必要だ。これらはすべて依頼先の業者にオプションとして頼まなければならず、料金も業者が独自に決めている。なかには指定業者の看板をうまく利用し、行政が指定する項目以外のオプションで、法外な請求をするケースもある。実際、区民葬の請求書を見て全項目を合計したところ、指定業者以外に安価なプランを依頼したほうが低価格になり、丁寧な対応を得られたというケースもある。

市民葬・区民葬の内容は行政によってまちまちで、設定していない地域も多い。葬儀の依頼を考える際は、役所・役場の窓口で設定された内容を十分に確認し、慎重に検討すべきだ。