メモに万年筆を使う理由
大学生の頃から、メモは万年筆で手書きです。メモには本の内容をそのまま書き写しているのですが、やはり手で文字を書くほうが、言葉が自分のものになっていく感覚がある。僕は、言語は「借り物」であるかそうでないかが非常に大事だと思っています。借り物の言葉で話す人は意外と多い。誰かが言っていたことを、さも自分のものであるかのように話してしまう。漢字とひらがなの使い分けや、句読点まで、著者の息遣いを感じながら書き写すことで、言葉を自分の血肉にして身体化するのが、僕のメモの流儀です。
万年筆を使うのにも理由があります。万年筆というのは、長く使っているとペン先の削れ方に自分のクセがついてくる。それを、包丁を研ぐように、自分の好きな角度に削っていく。そうすることで、だんだん自分の身体に馴染んでくる。書き写す内容によって、数種類ある万年筆の中から使い分けたりもしています。これも言葉の身体化のひとつなのだと思います。