大手ではベネッセが提供する「クラッシー」が、生徒向け動画コンテンツ配信や学校と保護者のオンライン連絡サービスなど、学校業務を包括的にケアするサービスで拡大。リクルートの子会社が運営する「スタディサプリ」は、講義配信、学習計画作成などのオンライン学習サービスを提供し、会員数が順調に増加中である。野村総合研究所の試算によると、EdTech市場は現在すでに2044億円規模。2025年には3210億円まで成長する見込みだ。

野村総合研究所の小山満氏は、市場が拡大する背景として、「20年が教育業界にとって変曲点」であることに注目する。

「新学習指導要領が小学校から実施され、英語には4技能が求められ、プログラミング教育が必修化されます。従来の授業のあり方が変わって、教師の負担増が懸念される中で、EdTechはそれを軽減する役割を期待されています。そこに近年、生徒間でスマホが普及したことも大きい。これまではパソコンやタブレットなどの機器がないと実現できないサービスは少なくなかった。今や学校だけではなく、家でも自由に学べる環境が整いつつあります」

教育市場にGAFAも参入

ひと口にEdTechと言っても、その包括する分野は幅広い。その中で特に市場成長が見込まれるジャンルは、小山氏によれば3つあるという。ひとつが、前出の「キュビナ」のように、AIが学習者の習熟度を分析し、適切な学習コンテンツを最適化して提供する「アダプティブラーニング」。タブレット型AI教材「アタマプラス」は、数学、英文法、物理、化学などの教科を網羅し、大手予備校が続々採用。「センター試験(数1A)で、2週間教材を学習した受験生の得点が平均50.4%増えた」という報告もある。

そして、生徒が能動的に参加するようになる学習手法が、「アクティブラーニング」。タブレットを使うことで教師と生徒間のコミュニケーションを活性化させる授業支援ソフト「ロイロノート」は、開成中高などの進学校をはじめ、小学校から大学、塾でも使われている。もうひとつが、講義映像をインターネット配信する「オンライン学習」だ。

こうしたビジネスチャンスを、ITの覇者・GAFAも見逃していない。近年、グーグルのOSを搭載した低価格の「クロームブック」を学習用パソコンとして導入する公立学校が増加。グーグルは、クラウドベースで管理ができる教育機関向けサポートツール「G Suite for Education」を無料で提供し、埼玉県ではすでに全県立高で導入している。ITに疎い教師に対する講習会なども積極的に開催し、教育市場を取り込みにかかっている。

今後、EdTechによって何が変わるのか。公教育へのEdTech普及に熱心な新宿区議会議員の伊藤陽平氏は、教師の役割の変化を予測する。