教師にとってもメリットは大きい

AI導入がプラスになるのは、生徒だけではない。教師にとってもメリットは大きい。

生徒が教材に取り組む間、教師は管理画面を通して、生徒別・問題別の学習状況をリアルタイムで確認できる。解答に苦労している生徒がいれば個別に声がけできるし、クラス全体の進捗や理解度を把握することで、授業の組み立てにも生かせる。

「テストに丸つけをして生徒に返していた今までは、教師の手元に記録されるのは点数だけでした。それが『キュビナ』を使うと記録が逐一残るため、間違えた問題だけを指導できます。また、帰宅してからの勉強時間を確認して、『こんな遅くまで頑張ってたんだね』と励ますことも可能。こまかいフィードバックができて、教師にとっても教えやすくなるのです」(神野氏)

また、アダプティブラーニング型のAI教材を使用すれば、方向性の逸れた生徒には一対一で対峙することができる。「統率」に使う時間を削減し、生徒たちとコミュニケーションする時間を増やせるのだ。

「最適化することで余った時間を使って、何をするかは生徒の自由です。余暇やスポーツに時間を費やすのもいいし、私は今こそSTEAM教育(科学・技術・工学・芸術・数学に重点を置く教育システム)に取り組むべきと考えています。麹町中では創出された授業時間で、学習した数学の知識とプログラミングを使ってドローンやロボットを動かしたり、3Dプリンタでアクセサリーをつくったりしています。それに子どもたちは目を輝かせて取り組んでいますから」(同)

▼[事業のマネタイズ]無料で生徒一人ひとりに授業できる仕組み

「大河の周辺は農耕が盛ん。そうなると人口が増えます」

スマホの画面に登場した教師が、ホワイトボードにポイントを書き込む。すると動画の下には「わかりやすいです」「なるほど!」のコメントがどんどん更新されていく。コメント欄に質問が書き込まれると、教師が直接反応したり、配信スタッフによる回答が返されたりしていった。

これは中学・高校生向けオンライン学習塾「アオイゼミ」の授業光景だ。こうしたオンライン学習講座は、08年ごろから海外の大学を中心に展開。近年、日本でもサービスを展開する塾や予備校が増えてきた。

アオイゼミが特徴的なのは、毎週月曜から土曜、19時から配信されるライブ授業の受講が、無料であることだ。オンライン学習講座は、最初は無料のお試しで、一定期間後は有料プランに移行していく場合が多い。

一方、アオイゼミは、過去の動画視聴やテキストダウンロード、個別質問などは有料プランながら、メイン事業を無料提供する。アオイゼミを運営する葵代表の内藤正史氏は、「FPだった創業者が、貧困家庭の現実を目の当たりにして、生活保護環境にも教育を届けたいという理念から起業しました。今もミッションは『教育の格差をゼロにする』です」と説明する。どうやってマネタイズしているのか。