東大入試に必要な「歴史の知識」は多くない

「鉄緑会」日本史科主任の岩田丞史さんに話を聞いた。

——最近の東大文系の歴史の入試問題の傾向をおおまかに教えてください。

【東京大学受験指導専門塾「鉄緑会」日本史科主任 岩田丞史さん(以下、岩田)】東大入試で要求される歴史の知識の量は決して多くはありません。しかし、重要事項や年代を正確に暗記することはもちろん必須ですし、その上、論述問題に対応するために全体像や歴史観に裏打ちされた、「生きた知識」を身につける必要があります。

——そのための学習教材として、歴史の学習まんがはどのような点で有効活用できると思われますか。

【岩田】学習まんがは、先ほど申し上げた歴史の全体像や歴史観を養成する上で非常に有効であると考えています。また、ともすれば単調で機械的なものになりがちな学習の途上において、歴史まんがを読むことは大いに彩りを添え、歴史学に対する高校生の情操を養う貴重な機会となるでしょう。

基礎が無理なく盛り込まれ、東大受験にも役立つ

——数ある学習まんがのなかでも、『角川まんが学習シリーズ 日本の歴史』は、東京大学 山本博文教授による「歴史の大きな流れをつかむ」技法に基づき構成しています。その時代の特徴が一目でわかるイラストページを入れるなど、要点を可視化する工夫をしています。その点についてはどう思われますか?

【岩田】驚きました。まんがとしておもしろいだけでなく、高校レベルの基礎までもが無理なく盛り込まれています。東大受験にも役立ちますね。まんがの性質として、「ヒーロー・ヒロインの活躍」を中心にストーリーが展開することが多いのですが、歴史は得てして一個人の思惑で動かされるものではありません。大学受験で問われるのは、主にそれぞれの時代の政治・経済・文化といったより大きな枠組みです。だからこそ本シリーズはたいへん貴重なものであると思います。まんがを通じて、時代ごとの特徴や要点を生き生きと学ぶことは、東大を含む大学受験勉強に大いに役立つと思います。

——日本の歴史の中で、特につまずきやすいのは近現代史だと言われています。一方で、2020年度から導入が始まる次期学習指導要領では、近現代史を学ぶ「歴史総合」が高校の必修科目になります。学習まんがで、近現代の日本史と世界史を一つの流れで理解する勉強法についてはどのように思われますか。

【岩田】産業革命、帝国主義、世界恐慌、二度の大戦、そして冷戦体制と、日本の近現代史は他の国と同様に、同時代の世界史にきわめて大きな影響を受けています。したがって、日本の近現代史を世界史の流れの中で理解することは非常に重要であると考えています。そのような大きなうねりを生きた近現代の人々の感情・生活を、まんがを通じて追体験することで、学習の上では抽象的で難解な部分も多いこの時代を学習する大きな助けになると思います。