養子縁組をするメリットデメリット

そんなに節税効果が出るならば、と養子縁組を検討する際の落とし穴があります。それは、お金のことよりも人間関係の問題です。

孫が複数いるのに一人の孫だけを養子にすると、特別扱いのようで、親族間で軋轢あつれきが生まれることを考慮しなければなりません。節税のためだけに養子をとるということはなるべく避け、残される親族の関係性を配慮してあげることが大切です。

一方、孫を養子にして孫を中心に相続財産を渡すことが良いケースもあります。

先ほど試算の例としたAさんが、実子3人が全員女性で、孫に男の子が1人いるとします。Aさんが地主さんであったり、事業を行っていたりした場合、後継ぎとして、嫁に行った娘たちではなく男の子の孫を考えているケースがあると思います。こんな場合は孫を養子にとって、そして相続の際には、その孫へ中心的に土地や事業を承継する、という方法が節税の面からもスムーズな承継という面からもお勧めです。

養子の数は制限あり! 実子はもちろん無制限

民法上、養子は何人とっても構いませんが、相続税の計算をするための「法定相続人の数」を数える上では、実子がいる場合は、養子は1人までしか数に入れられません。

Aさんのように実子が3人いる場合は、仮に養子が3人いたとしても「法定相続人の数」は、実子3人プラス1人で4人となります。

実子がいない場合は、2人までです。Aさんに実子がいなくて養子が3人いたとしたら、「法定相続人の数」は2人となります。

養子の数を無制限にすると、相続対策のために養子を100人とる人が出てこないとも限らないからです。

反対に、当たり前のことですが、実子の数に制限はありません。一人ひとり、お腹を痛めて産む子ですから、無制限にしても100人ということはあるはずがない、というわけです。

しかし、2014年、光通信の御曹司が複数のタイ人女性を代理母として、19人の赤ちゃんを産ませたという衝撃的なニュースが世間を騒がせました。

彼の場合は、認知さえすればあくまで「実子」が19人ですから、相続開始時点までこのままの状態が続けば、法定相続人の数は19人、基礎控除額は3000万円+600万円×19人=1億4400万円となります。彼は「子供100人計画」を立てていたとも当時報じられました。そうなれば基礎控除額は6億3000万円です。

このときも「相続対策で子供をたくさん作っているのでは?」という声が多く上がりました。法定相続人の数え方に、代理母を使って実子を増やすケースまでは想定していないため、時代や医学の進歩に合わせた法律の見直しも必要になってくるのかもしれません。