定額制で料金を取るビジネスモデル「サブスク」がブームだ。売切りが当たり前だった商品も、サブスクで提供する試みが始まっている。だが、マーケティング戦略コンサルタントの永井孝尚氏は、「サブスクは『魔法の杖』ではない。難度は通常のビジネスよりもむしろ高い」と指摘する——。

※本稿は、永井孝尚『売ってはいけない 売らなくても儲かる仕組みを科学する』(PHP新書)の一部を再編集したものです。

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トヨタも始めた「サブスク」

いま、サブスクリプションモデル(サブスク)が大流行おおはやりだ。サブスクとは、毎月定額制で料金を取るビジネスモデルのことだ。身近なところでは、雑誌や新聞の定期購読もサブスクの仲間だ。定期購読のことを英語で「サブスクリプション(subscription)」という。電気・水道・ガス・電話もサブスクだ。私たちの身近にあるサービスなのだ。

永井孝尚『売ってはいけない 売らなくても儲かる仕組みを科学する』(PHP新書)

このサブスクがいま、様々な分野に拡がっている。2019年にトヨタはサブスク「KINTO」を始めた。高級車レクサスであれば、月額約20万円で3年間に6種類のレクサスブランド車を乗り換えることができる。プリウスの場合は月額約5万円。車両代・登録時諸費用、税金・任意保険・自動車税が含まれる。

消費者がモノを所有することにこだわらなくなった。いまや、買取りが常識だったモノにまで、サブスクが拡がっているのだ。

このサブスクが大きな注目を浴びているのは、ビジネスとして魅力的だからだ。まず売上が安定する。解約しない限り顧客はお金を払い続ける。売上が安定すればビジネスのリスクも減る。売り切りよりも価格が下がるので、新規顧客にアプローチしやすくなる。だから、「ウチもサブスクをやれば売れる」とサブスクを始める会社が増えている。しかし、サブスクをすれば成功するほど、世の中は甘くない。