最近、ある本屋でクレジットカードを使ったら、「サインは要りません」と言われた。そういえば、近所の食料品店もサインは要らない。このサービス、考えてみればいつからあったのだろう。
「食料品店など、少額決済やレジでの混雑解消という意味で15年くらい前から導入されています。あくまでも例外ですけれど」と社団法人日本クレジット産業協会総務管理部の与口信三さん。通常3万円、1万円などの上限つきで普及しているようだ。
しかし、同じサインレスでもまったく逆方向のサービスを始めたのが、シティカードジャパンのダイナースクラブカードである。昨年11月からスタートしたこのサービスが使えるのは東京の高級飲食店。専用デスク経由で事前予約し、精算はサインレス。カードを出すこともない。
「日本のお客様にアンケートをしたところ、サインがストレスになっているとの回答があったので」と、シティカードジャパンのTSアニル社長が説明してくれた。世界で初めてのサービスというが、「サイン=ストレス」というのは、いかにも日本的発想といえるだろう。
現在使用できるレストランや料亭は、都内の一流店ばかり。一般サラリーマンにとってなかなか自腹で行けるような店ではないが、接待などで、“トイレに行くふりをしてサインをしたくない”というニーズがあるらしい。一方、富裕層は一昔前の「つけ」感覚で、常連客というセレブ感を味わえることが魅力なのだろうか。
「ご自身のカードでご家族に食事をプレゼントすることもできます」とアニル氏。景気の動向も気になるが、この「高級サインレスサービス」、これから、日本にどう普及していくのだろう。
(撮影=澁谷高晴)