渡辺さんが加入するがん保険は、最新型ではないが先進医療は対象となるもの。その他医療保険なども含め、世帯年間払い込み保険料は70万円にも上る。保険料が半額くらいになるように、そろそろ加入を見直したほうがいいかなという考えもよぎるが、「まだ自分は働いているから」と思い、なかなか決断できないと言う。

52歳で希望退職に応じた

渡辺さんは日本を代表するメーカーにエンジニアとして勤めていたが、52歳で希望退職に応じた。

「新卒で入社して以来、給与や昇給見込みなどを自分でデータベース化して予測管理をしていたのですが、定年まで会社に残っても、資産が目標金額に到達しそうもなかった。それなら、割増退職金を受け取って転職したほうが有利だと考えたのです」

転職先でもエンジニアとして活躍。契約制で61歳まで働いたところで、手掛けていた仕事に区切りがついた。そこで国際協力機構(JICA)の海外協力隊に応募。半年間、アフリカに単身赴任した。

帰国後は、赴任中にエージェントを通して見つけた企業に、すぐに再就職した。技術系の国家資格を生かし、現在は週1回の勤務で月収約18万円を得ている。そのほかに年金と企業年金も受給しているが、月の収入は現役時代と比べれば、15万円ほど少ない。

現在はエクセルで100歳までのキャッシュフロー表を作成するなど、お金への意識が高い渡辺さんだが、マイホームの住宅ローンが家計を圧迫している時期もあった。

「バブルのピークから1年後、同僚が家を買ったと聞いて、それなら俺にも買えるはずだと思わず購入してしまったのです」

何事にも綿密な計画を立てる渡辺さんだが、マイホーム購入だけは無計画だった。少しでも有利に住宅ローンを返済しようと、10年ほど経過したときに借り換えを銀行に相談したが「評価額がローン残高より1000万円低いので難しい」と断られてしまった。

「悔しいから、評価額をアップさせるため自分で設計して増築を行いました。見事成功し、借り換えができました」

そのローンも52歳で希望退職したときの退職金で完済。現在の仕事は1年更新だが、70歳までは続けられそうなので、それまでに“想定外”の穴埋めのため、新たな手段で蓄えを増やしたいと考えている。始めたのはロボットアドバイザーを活用した運用。低リスクの設定で運用しているが、慣れたら、もう少し高いリターンを狙うことも考えている。「暗号資産も勉強したい」と積極的だ。

新型投資に挑戦して100歳まで元気に生き抜く
(撮影=岡村隆広)
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