ネットで儲かる仕組みができていない
明らかなのは、世の中から「紙の新聞」が姿を消そうとしているということだ。大学生や20代の社会人は紙の新聞をまず読まない。定期購読しているのは比較的年齢が高い層の家庭で、しかも、団塊の世代が70歳代半ばに差し掛かるとともに、新聞の購読を止める人が増えている。
現役世代や若者は、圧倒的にインターネットを通じた情報を活用している。ネット上の情報はまだまだ無料のものが多い。新聞社もデジタル化を拡大しているが、問題は紙の新聞ほど儲からないことだ。ネットでマネタイズできるモデルがなかなか構築できていないのだ。
紙の新聞の部数が減れば、印刷工場の稼働率が落ち、収益性はさらに下がる。紙の広告料は大手紙で1ページ1000万円以上という価格が付いているが、部数が減れば値崩れを起こす。新聞を支えてきたビジネスモデルが崩れているのである。
さらなる増税に向けて「恩を売った」のではないか
新聞社からすれば、その崩壊に拍車をかける可能性のある読者の負担増は何としても避けたかったというのが本音だろう。そんな新聞社の懐事情を察してか国は定期購読の新聞に軽減税率を認めた。もしかすると、いずれ紙の新聞は消えていくという読みがあるからかもしれない。だが、軽減税率によって、新聞社に大きな恩を売ることができる。新聞社側からみれば、わずか2%分の税免除によって魂を売ったことになるのではないか。
というのも、財務省はこの先、消費税率のさらなる引き上げを進めたいと思っているのは間違いない。欧州の20%前後まで一気に引き上げることはできないにせよ、徐々に消費税率を引き上げることはある意味、悲願だ。人口減少で働く人の数が減っていけば、所得税に頼ることはできず、消費税率の引き上げは不可避になってくるからだ。安倍晋三首相は「今後10年間、増税は必要ない」と言っているが、首相が変わればどうなるか分からない。
そんな時、新聞がどんな論調を張るか。増税反対に回るか、増税やむなしに傾くかは、財務省にとっては大きな関心事である。軽減税率適用で恩を売っておけば、消費税率の引き上げ論議に好意的なスタンスを新聞各紙が取ってくれる、そんな思いが透けて見える。