40歳になると、加齢による体の変化があります。すると、嫌でも自分の残り時間に、気づいてしまいます。心理学者ユングのいうところの、人生の正午です。
ずいぶんと白髪も増えてきた。体力も落ちてきた。同級生が体調を崩して入院したり、自分自身も大きな病気を経験したり。そういうことを経験する年齢です。そうなると、「あれ? 噂には聞いていたけれど、人生ってこんなに短いの? やりたいことを、やっておかなければ……!」。そう思う人が出てくるのも当然でしょう。まさに、「年齢が……」なんて言い訳している時間すらないと気づきはじめます。
そこに気づく人が出てくるのが40歳。さすがに30歳では、そこまで気づけないかもしれません。僕自身、30歳になったときは、そこまで考えていませんでした。
「あと10歳若かったら……」と、みんなが悩む
さて、例の女子高生の言葉を聞いたあと。僕はすぐに、あることを思い出しました。
「そういえば僕も、たいして変わらなかった。20歳でカウンセラーをあきらめたとき、もうこんな歳からじゃ、やり直しはできない、若いときもっと勉強していれば……、高校入試、せめて大学入試からやり直せたらな……。そんなふうに思っていたよな~」
今の年齢になって考えてみると、高校生も20歳もほとんど一緒。いくらでもやり直せます。でも、20歳の僕はたしかに、「もうこんな年齢なんだから……」と思っていました。それを考えると、「もうこんな歳だから……」という悩み。実は年齢に関係なく、すべての年齢の人が悩むんですよね。
僕が25歳のとき。もう一度心理学を学んで、思ったこと。
「5年前、20歳のときにあきらめた、心理職への道。それがまだ心のどこかに、引っかかっている。もし、今また何もせずにあきらめたら……。今から5年後の30歳になったとき、また同じことを悩む。25歳のあのときなら、まだ間に合ったのに……。今までの僕のパターンを考えると、またきっとそうなる。情けないけれど、それが目に見えている」
「いや、5年後だけじゃない。10年後も、15年後も、きっと同じことを思う。今のまま35歳、40歳になったら、きっと同じ後悔をする。もう10歳自分が若かったら、やり直せたのに……。僕はきっと、それを言い続けるのだろう。これじゃタイムリープの小説みたいだ」
「それを考えると、問題の本質は年齢ではない。一度は、自分が納得いくまで、やりきってみたかどうかだ。それをやる以外に、このモヤモヤを手放す方法はないんだ」
そう思ったことを、今でもはっきりと覚えています。