「太っている人は自己管理ができない人だ」という人がいる。だが同じだけ食べても、体重の増え方は人によって違う。文化人類学者の磯野真穂氏は「肥満が自己管理の失敗と結びつけられた一因は、20世紀後半に広まった予防医学の影響がある」という——。

※本稿は、磯野真穂『ダイエット幻想』(ちくまプリマー新書)の一部を再編集したものです。

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メディアで話題になった「シンデレラ体重」

2018年冬、シンデレラ体重という言葉がメディアで取り上げられ話題になりました。出所は不明ですが、ネットで広く共有される情報を見ると、BMI18、あるいは身長(m)×身長(m)×20×0.9の計算式で算出される体重のことを指すようです。たとえば、身長150cmだと40.5kg、155cmだと43.2kg、160cmだと46.1kg、165cmだと49kgがシンデレラ体重になります。

私が担当する早稲田大学の医療人類学のクラスを受講した学生たちがシンデレラ体重についての大変興味深いアンケートを実施してくれたので紹介しましょう。

アンケート回答者は、彼女たちの友人・知人84名で、同世代の大学生です。84名はアンケートとして多い数字ではなく、データが発表の数日前に慌てて集められたというほほえましい経緯もあるため、これがどの程度一般化できるかは議論の余地があります。しかし友人からの依頼という、回答者にとって気軽に答えられる状況でのアンケートなので、その点に置いてはむしろ信頼がおけるともいえるでしょう。

ここから先は、彼女たちが提供してくれた元データを、私が再分析しながらお話を進めます。