“メタボ”と略されるほど認知度がアップしたメタボリック症候群。その中核が肥満である。
その肥満も一線を越えると、単独で肥満症という病気になる。肥満症の定義は、以下の2つのうち、どちらかに該当することである。
(1)BMI(ボディ・マス・インデックス)が25以上で、糖尿病、高脂血症、高血圧、高尿酸血症、脂肪肝、心筋梗塞、脳梗塞、変形性関節症、月経異常、睡眠時無呼吸症候群の10の疾患のうち一つでも合併している。
(2)BMIが25以上で内臓脂肪が100平方センチ以上ある。
肥満症になると、これは未病ではなく、れっきとした病気なので、治療が必要となる。
治療は行動修正療法から始まる。食事・運動を含めて、生活の中の“肥満に結びつく悪い点”に気づき、それを修正していくのが行動修正療法である。
この治療に音をあげる人は少なくない。そうすると、次の段階は薬物療法になる。が、使える薬は「マジンドール」1つしかない。それも、この薬が使えるのはBMI35以上の人のみで、3カ月間、食事・運動療法を行っても効果がない場合に限られている。
BMIは体重(キロ)÷身長(メートル)の2乗。身長の2乗なので、体重を身長で2回割る。たとえば身長167センチで体重75キロの場合、次のような式になる。
75÷1.67÷1.67≒26.9
その数値が25~30未満が肥満1度、30~35未満が肥満2度、35~40未満が肥満3度、40以上が肥満4度となる。マジンドールは、このうち肥満3度以上の重症肥満者以外には使えないうえ、さらに依存性と睡眠障害という副作用がある。
日本にはBMI35以上の肥満症患者は約50万人いると推測されている。その人々が肥満症を治したいと切望し、薬が副作用でダメな場合は、現在、外科治療が行われている。
外科治療には胃を小さくするための開腹手術があるが、ほとんど受ける患者はいない。そのため2004年から登場したのが「胃内バルーン留置術」である。内視鏡を使ってシリコーン製のバルーン(風船)を胃の中に留置し、胃の容積を減少させる。内視鏡手術なので、体にやさしい治療である。
そして、治療法はもう1つある。「胃バンディング術」である。これは腹腔鏡を使って、胃の入り口部分をシリコーン製のバンドで締め、食べ物を通りにくくするものである。
アメリカでは06年だけで12万人の肥満症患者がこれらの治療を受けた。日本ではこれまでに両方を含めて治療を受けたのは300例程度。体にやさしい治療なので、今後、もう少し増えていくと思われる。
食生活のワンポイント
今回は、行動修正療法を理解してもらいたい。肥満に結びついた自身の生活をしっかり見直す。たとえば、会社帰りに自宅近くのコンビニに入って、ついお菓子を買って食べてしまう人。それならば、コンビニの前を通らない。揚げ物を多く食べていた人ならば、和え物を多くするようにする。
もちろん、体重の目標も設定しないと、ダイエットは前に進まない。目標のダイエットの数値は、6カ月で体重の5%。80キロの人であれば、6カ月で4キロやせれば目標達成である。半年で5%では体はまったく変わらないように思うだろうが、実はそうではない。それだけでも内臓脂肪は減って、中性脂肪、総コレステロール、血糖、血圧も下がる。
ダイエットを実行する人で、炭水化物や脂肪をまったく摂らない無茶を行っている人もみかける。それでは体調を崩してしまう。タンパク質25%、脂肪20%、糖質(炭水化物)55%のバランスで、全体的に摂取量を減らすのがポイント。その場合は、必ず医師の指導を受けるのが原則である。